1993 年 84 巻 2 号 p. 382-385
60歳男性の移行上皮癌, G3, 前立腺への局所浸潤性膀胱癌患者に, 著しい末梢血中白血球増多症 (WBC64,900/mm3) がみられた.
術前検査で, CTと骨シンチグラムを行ったが遠隔転移巣は認めなかった. 他に炎症, 感染巣はなかった. 胸骨骨髄生検では白血病は否定され, 本腫瘍による類白血病反応が疑われた. 両側内腸骨動脈よりの腫瘍栄養動脈から mitomycin Cマイクロカプセルと cisplatin を用いて化学動注塞栓術を行ったところ腫瘍は縮小し, 白血球数も減少して10日後には8,200/mm3と正常内となった.
膀胱前立腺全摘術を行い, 術後2ヵ月間は白血球数正常内であったがその後急速に増加し, 2ヵ月半には51,300/mm3まで再上昇した. CTで, 骨盤内に再発腫瘤を認めた. この時点での血中G-CSF濃度は130.9pg/ml (正常30以下) と高値を示していた. 現在化学療法を行い経過観察中である.
以上の諸検査と臨床経過から, 自験例にみられた類白血病反応は, G-CSF産生膀胱腫瘍によるものと考えられた.