日本泌尿器科学会雑誌
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表在性膀胱癌に対する (2″R)-4′-0-tetrahydropyranyladriamycin および adriamycin 膀胱腔内注入における組織内濃度に関する検討
雑賀 隆史津島 知靖那須 保友野田 雅俊明比 直樹郭 春鋼高松 正武大森 弘之宇埜 智城仙 泰一郎
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1993 年 84 巻 7 号 p. 1206-1210

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抄録

表在性膀胱癌に対する膀胱腔内注入療法における adriamycin (ADM) と, その誘導体である (2″R)-4′-0-tetrahydropyranyladriamycin (THP) の二剤について, その有用性を比較検討する目的で膀胱腫瘍部および非腫瘍部への移行濃度について検討した.
対象および方法は, 表在性膀胱癌21例に対し, 抗癌剤による治療歴のある10例と治療歴の無い11例の2群をADM群とTHP群に randomize した. ADM 30mgまたは, THP 30mgを生理食塩水30mlに溶解し, 膀胱内に注入し, 1時間後に腫瘍組織および正常組織を生検鉗子にて採取した. 組織内ADMおよびTHP濃度は高速液体クロマトグラフィ (HPLC) を用いて測定した. その結果, THPはADMと比較して, より高濃度に腫瘍に移行しており, THPの有用性が示唆された. また, 抗癌剤による治療歴のある10例と治療歴の無い11例を比較すると, 腫瘍部平均濃度は前治療のある群では前治療のない群と比較して低値であり, 治療歴が腫瘍内取り込みに影響を与えることが示唆された. さらに, 治療歴のある症例においても, THPはADMに比べて, より高濃度た腫瘍に移行していた. 以上より, THPは表在性膀胱癌に対する膀胱腔内注入療法に適した薬剤と考えられた.

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