日本泌尿器科学会雑誌
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直腸診, 血清前立腺特異抗原値および経直腸的超音波法の併用による前立腺癌検出率の検討
頴川 晋劉 星星桑尾 定仁内田 豊昭横山 英二真下 節夫小柴 健
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キーワード: 前立腺癌, 検出率, 早期診断
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1993 年 84 巻 7 号 p. 1236-1243

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抄録

北里大学病院泌尿器科を受診し, 種々の理由で前立腺超音波検査の必要性を認めた234名の男性患者に対して直腸診, 血清前立腺特異抗原測定, 経直腸的超音波法を行い, このうちの71名に経直腸的生検術を施行した. その結果, 生検によって19例 (26.8%) に前立腺癌が発見され, これは234名の8.1%に相当していた. 便宜的に前立腺特異抗原値を<2ng/ml, 2~10ng/ml, >10ng/mlの3群に分類すると, 生検による癌陽性率には前立腺特異抗原値に応じて大きな差異が認められた. 即ち, 直腸診上癌が疑われた場合では各々3.3%, 77.8%, 100% (全体では32.6%) の陽性率であり, 直腸診上癌の疑いなしと判定された場合は, 各々5.9%, 28.6%, 100% (全体では16.0%) の陽性率であった. 各検査法の positive predictive value は, 直腸診単独では32.6%であったのに対し, 直腸診での異常所見に加えて前立腺特異抗原値の上昇が認められた場合には87.5%であった. 局所限局性前立腺癌との診断下に根治的前立腺全摘除術を施行した9例中5例には既に精嚢浸潤および閉鎖リンパ節転移が認められ, 実際には進行性病変であった.
わが国においても診断技術の進歩により今後前立腺癌検出率が増大していくものと推察される. 前立腺癌の生物学的悪性度を予測する方法の開発や諸検査陰性例に対しても連続的, 経時的な追跡を行うことなどにより局所限局性で根治可能な前立腺癌をより多く検出する一層の努力が必要であるものと思われる.

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