日本泌尿器科学会雑誌
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水腎の対側腎血流量と糸球体容量に及ぼす影響
太田 章三近田 龍一郎折笠 精一久慈 了坂井 清英金田 隆志池田 成徳阿部 優子
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1993 年 84 巻 7 号 p. 1248-1254

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抄録

一側水腎が, 対側腎にどのような影響を及ぼすかについて, 腎が発育過程にある幼若S-Dラット (体重80~90g) を用いて以下の実験を行った.
一側 (左) 尿管完全閉塞 (CUUO) を作製し, 3日後閉塞の解除 (閉塞解除群), 閉塞腎の摘出 (閉塞腎摘出群), 開腹のみで閉塞は継続 (閉塞継続群) の3群に分類した. この操作前後で各群対側健腎の腎皮質血流量 (レーザー微小循環血流計を使用) 及び糸球体容量の変化を観察し比較検討した. なお, コントロール群としては0, 3日に開腹のみを行ったラットを用い, 右腎に対して同様の検討を行った.
単位体積あたりの腎皮質血流量は, 各群ともに漸増したが, 全期間にわたり各群間に有意な差はなかった. 腎全体の血流 (単位体積あたりの血流×腎湿重量) でみると, 腎発育の程度と平行して増加し, 閉塞腎摘出群ではコントロール群や閉塞解除群に比べ有意な増加を示した.
糸球体容量についてみると, 閉塞解除群では解除後2日目から11日目まではコントロール群に比し有意な増大を認めたが, 18日目にはコントロール群と同レベルとなった. これに対し, 閉塞腎摘出群, 閉塞継続群では2回目の操作後, コントロール群に比べ有意に大きいまま推移した. 腎皮質血流との関係を見ると, 閉塞腎摘出群, 閉塞継続群では腎全体の血流にほぼ平行し糸球体容量が増大した. これに対し, 閉塞解除群では, 血流はいずれの時期でもコントロール群と有意の差はなく, 糸球体容量の変化とは必ずしも一致しなかった.
この結果は, 糸球体容量の増大には血流増加以外の因子も関与している可能性を示唆するものであった.

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