日本泌尿器科学会雑誌
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ヒト正常副腎および副腎腫瘍組織における progesterone 結合蛋白の発現
出村 孝義渡井 至彦富樫 正樹大橋 伸生力石 辰也平野 哲夫野々村 克也小柳 知彦
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1993 年 84 巻 7 号 p. 1286-1292

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抄録

我々はヒト副腎組織に guiena pig 副腎皮質で見いだされた progesterone 結合蛋白 (P4-BP) と同様な蛋白が局在していないか確かめるため, 正常副腎および各種副腎腫瘍の核の progesterone 結合活性を検討した. ヒト副腎から核分画を調製し, steroid binding assay 法により副腎核中の progesterone 結合活性を測定した. 6例の正常副腎組織中には progesterone の高親和性結合は認められなかったが, ACTH非依存性に steroidogenesis が亢進していた5例の Cushing 症候群患者から採取した副腎腺腫組織中には全例結合活性を認めた (Kd=13.85±1.99nM (mean±SD), Bmax=1.95±0.37pmol/mg DNA (mean±SD)). しかし, 内分泌非活性副腎腺腫や原発性アルドステロン症を呈する副腎腺腫では progesterone 結合活性は同定できなかった. 結合活性は progesterone に特異的であり, 5α-pregnane-3, 20-dione は中等度の競合阻害を示したが, 17β-estradiol, testosterone, cortisol やその他のステロイドは弱い競合阻害しか示さなかった. 以上より, ヒト副腎組織の核には guinea pig 副腎皮質のP4-BPと同様の解離定数と特異性を有する progesterone 結合活性が存在することが判明した. 薄層クロマトグラフィーによりクッシング症候群を呈する副腎腺腫だけでなく正常ヒト副腎組織の核にも〔3H〕progesterone が結合する事から, ヒト正常副腎組織においては progesterone 結合活性が非常に低いため通常の steroid binding assay 法では同定されない可能性がある.

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