1994 年 85 巻 9 号 p. 1380-1387
現在, 進行性腎細胞癌に対する十分な治療法は確立されていない. インターフェロンによる免疫療法においても, その有効率は20%前後である. 今回著者らは, 近接効果においてIFN-αが奏功した進行性腎細胞癌患者2症例を経験した.
これら2症例について末梢血中リンパ球サブセットを two-color flowcytometry を用いて測定し, その値と臨床経過とを比較検討した.
この結果, 病勢とほぼ一致して変動したリンパ球サブセットはTc (CD11b-CD8+), TSI (leu8+CD4+), ATS/C (CD8+HLA-DR+), ATH/SI (CD4+HLADR+) であった.
さらに, これらの症例においてはインターフェロン投与前および投与開始後のTH/TS, CD4+/CD8+の比が値が高値を示していた. 以上の結果から, 進行性腎細胞癌症例においてTH/TS, CD4+/CD8+の値が高値を示す症例はIFN療法の responder となる可能性があると考えられた. またTSI, TC, ATH/SI, ATS/Cのリンパ球サブセットは病勢を判定する免疫学的指標になると考えられた.