日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
膀胱の肉腫様癌の1例
平川 和志大室 博藤枝 順一郎山城 勝重
著者情報
キーワード: 肉腫様癌, 膀胱腫瘍
ジャーナル フリー

1995 年 86 巻 10 号 p. 1583-1586

詳細
抄録

膀胱に発生し, 悪性線維組織球腫 (MFH) との鑑別診断に苦労した肉腫様癌 (sarcomatoid carcinoma) の1例を経験した.
症例は62歳, 男性. 肉眼的血尿を主訴に近医泌尿器科を受診した. 内視鏡にて膀胱後壁から頂部にかけ広基性非乳頭状腫瘍を認め, TUR-Btを施行された. 病理組織所見にてMFHが疑われ, その後の治療を目的に当科を紹介された. CT, 骨シンチ等の検査にて他臓器転移やリンパ節転移は認められなかった. 1991年4月25日, 浸潤性膀胱腫瘍の診断にて膀胱全摘除, 骨盤リンパ節郭清, 回腸導管造設術を施行した. 病理組織検査では明らかな上皮性腫瘍を示す部位は認められず, 腫瘍細胞は紡錘形細胞で構成され, 部分的に花むしろ状構造 (storiform pattern) を示していた. このためH-E染色ではMFHとの鑑別診断がつかなかったが, 免疫染色にて上皮性腫瘍細胞であることを示す cytokeratin が陽性であり, 膀胱原発肉腫様癌と診断した. 本症例のごとく, 明らかな上皮性腫瘍細胞の成分を全く含まない肉腫様癌は極めて稀であり, MFH等の非上皮性腫瘍との鑑別診断には十分に慎重でなければならない.

著者関連情報
© 社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top