(背景と目的) 外尿道括約筋に対する自律神経支配に関しては未だ明らかにされていない. そこで雄家兎摘出外尿道括約筋標本を用いて, adrenalin 受容体およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP) 受容体の存在について薬理学的に検討を加えた.
(対象と方法) 外尿道括約筋標本は Krebs 液を含む2mlの組織浴槽に懸垂, 固定し, 経壁電気刺激 (EFS: electrical field stimulation) を加えて (誘発攣縮, EFS収縮), 等尺性収縮力を記録した.
(結果) EFS収縮は tetrodotoxin (10
-7M) および vecuronium (10
-4M), suxamethonium(10
-4M) により, ほぼ完全に抑制された.
Norepinephrine (NE) (10
-8M~10
-4M) はEFS収縮には影響を与えなかったが, 用量依存性にその静止張力を増加させた. NEによる静止張力の増加作用は phentolamine (10
-6M) の前処置により有意に抑制された. Clonidine (10
7M) および yohimbine (10
-7M) はいずれもEFS収縮および静止張力に影響を与えなかった.
Isoproterenol (10
-9M~10
-6M) は carbachol (10
-5M) で収縮させた外尿道括約筋のEFS収縮および静止張力のいずれに対しても弛緩反応を示さなかった.
Propranolol (10
-9M~10
-6M) は carbachol (10
-6M) で収縮させた外尿道括約筋のEFS収縮および静止張力に影響を与えなかった.
CGRP (10
-7M~3×10
-6M) も外尿道括約筋のEFS収縮および静止張力に影響を与えなかった.
(結論) 以上の結果より, 雄家兎外尿道括約筋の収縮および弛緩にはα
2受容体やβ受容体ならびにCGRP受容体の関与は認めなかったが,α
1-adrenoceptor の関与が示された. この作用は体性神経刺激を修飾する形ではなく, postsynaptic に作用し, 外尿道括約筋の静止張力を高める形で関与しているものと考えられた.
抄録全体を表示