日本泌尿器科学会雑誌
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86 巻, 10 号
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  • 大西 哲郎, 大石 幸彦, 飯塚 典男, 白川 浩, 波多野 孝史, 牧野 秀樹, 冨田 雅之
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1505-1513
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 腎細胞癌の遠隔転移巣に対する手術施行例の生存率を算出して, 手術療法の限界と適応に関して検討した.
    (対象と方法) 対象症例は, 遠隔転移巣に対する手術施行48例 (再発症例: 37例, stage 4B: 11例) である. (結果) P. S. 0は1や2に比較して, また, P. S. 1は2に比較して, さらに急性反応性物質 (赤沈,α2-globulin, C-RP) が1項目異常または異常を認めなかった例は, 2項目以上異常であった例に比較してそれぞれ有意に生存率良好であった. 初診時の stage 別検討では, stage 1および2は手術施行例が未施行例に比較して有意に生存率良好であった. また stage 4Bは手術施行例と未施行例間で臨床的背景因子が大きく異なっていたが, 手術施行例の生存率が未施行例に比較して有意に生存率良好であった. 手術の根治性の有無では, 根治的切除を行った例の生存率が良好の傾向であったが, 非根治的切除例との間に生存率の有意差はなかった. さらに, 手術臓器別検討では単一臓器切除例は各臓器別に生存率の有意差はないものの, 患側副腎や肺転移切除例に術後生存期間の長い症例が多く, 逆に対側副腎や膵転移例に術後生存期間が短かった. また多臓器手術例では一定の傾向はなかった. 手術に加えて施行した療法別検討では, 生存率に有意差はないもののIFNやIL-2併用例に生存期間の長い症例が多かった.
    (結論) 遠隔転移巣に対する手術療法は, 以上述べた各因子を考慮した上で慎重に計画することが予後改善につながる重要な点と考えられた.
  • 北小路 博司, 寺崎 豊博, 本城 久司, 小田原 良誠, 浮村 理, 小島 宗門, 渡辺 泱
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1514-1519
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 過活動性膀胱に対して鍼治療を行い, その有効性について検討した.
    (対象と方法) 対象は尿流動態検査にて過活動性膀胱を呈した症例11例 (男性9例, 女性2例) で, 年齢は51歳から82歳 (平均71歳) であった. 主訴は切迫性尿失禁9例, 尿意切迫2例であった. 全例に対して, 鍼治療前後に自覚症状を評価し, さらに尿流動態検査を施行して鍼の効果判定を行った. 鍼治療部位は, 左右の中りょう穴 (BL-3) であり, ディスポーザブルの鍼 (直径0.3mm) を50~60mm刺入し, 10分間手による回旋刺激を行った. 鍼治療の回数は4回から12回 (平均7回) であった.
    (結果) 自覚症状では, 切迫性尿失禁は9例中5例に著明改善 (尿失禁の消失), 2例に改善 (尿失禁回数および量の減少) を認め, 尿意切迫を主訴とした2例の排尿症状は正常化した. その結果, 自覚症状の改善率は82%であった. また, 治療前の尿流動態検査にて11例全例に認められた無抑制収縮は, 治療後6例で消失し, 治療前後の比較では, 最大膀胱容量と膀胱コンプライアンスに有意な増加が認められ, 尿流動態検査でも改善が認められた.
    (結論) 以上より, 中りょう穴を用いた鍼治療は, 過活動性膀胱にともなう切迫性尿失禁と尿意切迫に対して有用であった.
  • 武智 伸介, 西尾 俊治, 横山 雅好, 岩田 英信, 竹内 正文
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1520-1524
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 膀胱尿管逆流症 (VUR) を有する神経因性膀胱 (NGB) 患者にとって腎機能低下は生命予後を脅かすものである. これらの患者に逆流防止術は効果的との報告はあったが, 清浄間欠自己導尿 (CIC) 自体の有効性に関してはまだ明らかではない.
    (対象と方法) 膀胱尿管逆流症 (VUR) を有する神経因性膀胱患者16名を清浄間欠自己導尿 (CIC) にて治療した. 原疾患は二分脊椎8名, 子宮癌術後3名, 5名は脊髄損傷・脊椎カリエス・麻疹性脳症, 2名は不明であった. 11名に hyperactive bladder を認め, 3名に hypoactive bladder を認めた. 残り3名では評価できていない.
    (結果) VUR grade III 未満の3名 (3尿管) でVURは消失した. 9名 (13尿管) で逆流防止術を施行した. 3名では膀胱拡大術を必要としたものの, 逆流防止術の成功率は84で6%であった.
    (結論)VURを有する神経因性膀胱患者に対してVURのコントロールはCICのみでは困難である. しかしながら, 外科的治療を併用後のVUR管理においては, CICはすぐれた手技といえる.
  • 呉 斌, 伊藤 吉三, 斉藤 雅人, 渡邉 泱
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1525-1529
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 前立腺肥大症 (以下BPH) 症例において, 血清PSA値が上昇する原因について検索する.
    (対象と方法) 前立腺被膜下摘除術を受けた48例のBPH患者を対象として, 前立腺重量と前立腺外腺重量との関係を検討し, さらに前立腺重量, 外腺重量, 内腺重量, 前立腺内腺成長スピード, 年齢などのパラメーターと血清PSA値 (以下PSA) との関係を検討した.
    (結果) 1) BPHにおいて従来考えられていたように, 前立腺外腺重量は前立腺が肥大するにつれて萎縮, 減少することはなかった.2) PSAは内腺重量および内腺成長スピードとよく相関し, 外腺重量および年齢とは無関係であった.
    (結論) BPH症例においてPSAが上昇するのは, 主として内腺の増大によることがわかった.
  • 松田 博幸, 野々村 克也, 永森 聡, 篠原 信雄, 小柳 知彦, 丸 彰夫, 松野 正, 藤枝 順一郎, 南 茂正, 森田 肇, 阿部 ...
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1530-1537
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 進行性前立腺癌に対し, 初回治療として内分泌療法に癌化学療法を追加することの意義について検討した.
    (対象と方法) 1991年1月より2年間に組織学的に前立腺癌と診断された病期D2新鮮例を対象とした. 全例去勢術を行い, A群; エトポシド, B群; エストラサイト, C群; 去勢術のみの3群間で治療効果につき randomized study を行った. また治療後6ヵ月目に組織学的な治療効果をみた.
    (結果) 登録症例数はA群18例, B群12例, C群16例の46例であったが, 適格例は44例であった. 適格例における各群間の患者背景に差はなかった. 完全例はA群15例, B群4例, C群14例の合計33例であった. また25例が病理学的に判定可能であった. 治療後6ヵ月時点での, NC以上の臨床的奏効率はA群12/15 (80%), B群4/4 (100%), C群11/14 (78.6%) であったが, 統計学的な有意差はなかった. ただしB群において副作用で脱落する例が有意に多かった. 組織学的効果を各群で比較すると, B群では4例全てが Grade 2以上の効果がみられたのに対して, A群とC群では Grade 1以上の効果は33.3%にすぎなかった. これを前立腺癌の総合評価と比べてみると, 良く相関した.
    (結論) 以上の結果より, 病期D2前立腺癌に対する初期治療として, 去勢術とエトポシドないしエストラサイトの併用は, 治療後6ヵ月時点では, 去勢術単独を上回る結果が得られないと考えられた.
  • 大西 哲郎, 大石 幸彦, 飯塚 典男, 鈴木 康之, 白川 浩, 波多野 孝史, 冨田 雅之
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1538-1542
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 腎細胞癌に対する腎摘後, 孤立性膵転移を生じる稀な例の臨床的特徴に関して検討した.
    (対象と方法) 腎細胞癌752例中, 腎摘後膵に孤立性に再発を認めた7例を検討対象とした.
    (結果) 初診時の年齢は32~67歳 (median=48歳) と腎細胞癌全体に比較して10歳程度低かった. 性差では, 男子が4例, 女子が3例と, 腎細胞癌全体からみると女子の比率が相対的に高かった. 原発巣の左右差は無かった (左が3例, 右が4例). 腎摘時の stage は low stage (stage 1+2) が85.7%を占めた. 原発巣の grade も low grade (grade I+II) が85.7%を占めた. 腎摘後膵へ再発するまでの期間は37~228ヵ月間 (median interval=140ヵ月間) と, 晩期再発症例が71.4%を占めた. 膵内転移部位は, 膵体部を中心に様々な部位に認められた. またその大きさの median は4.25cmであった. 治療法は, 膵切除が5例, 2例が化学療法やIFNとの併用が行われていた. また, 膵治療後6例が膵以外の臓器に再発を認め, これらの内5例が癌死 (median interval=18ヵ月間) していた. 残り2例中1例が癌あり生存 (73ヵ月), 1例が癌無し生存 (4ヵ月) と予後は1症例を除いて不良であった.
    (結論) 腎細胞癌の腎摘後孤立性膵転移症例は, low stage/low grade の症例に多く, 若年の傾向であり, 女子にやや多く, 晩期再発症例が多く, 手術的切除後も予後は不良であった.
  • 大山 力, 伊藤 明宏, 徳山 聡, 中角 尚誉, 鈴木 謙一, 川村 貞文, 佐藤 信, 斎藤 誠一, 吉川 和行, 星 宣次, 折笠 精 ...
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1543-1551
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 抗 proliferating cell nuclear antigen (PCNA) 抗体による免疫組織染色と鍍銀染色による argyrophilic nucleolar organizer region (AgNOR) 法を用いて精巣腫瘍の増殖能を評価し, 臨床経過と比較した.
    (対象と方法) 精巣腫瘍症例45例と正常精巣10例を対象とした. 検体の10%中性ホルマリン固定時間は24時間以内であった. 患者が精巣腫脹に気付いた時期から術日までの月数をM (月), 摘出腫瘍重量をgとし, 原発巣の増大率を Growth rate=g/Mで概算した.
    (結果) PCNA陽性率はセミノーマで70.5±19.1% (mean±S. D.), 非セミノーマで80.4±10.5%, 正常精巣で17.7±7.8%であつた. PCNA陽性率はセミノーマの stage I: 64.4±19.9%とII+III: 83.6±7.3%の間で有意差を認めた (p<0.05) が, 非セミノーマの stage I と stage II+IIIの間では有意差を認めなかった. 核1個あたりのAgNOR数はセミノーマで8.09±1.35 (mean±S. D.), 非セミノーマで6.89±1.43, 正常精巣で4.18±1.60と腫瘍組織で高値を呈したが, 各 stage 間では有意差を認めなかった. PCNA陽性率と原発巣の Growth rate との間には対数関数的相関関係を認めたが, AgNOR数との間には認めなかった. surveillance policy で経過観察定れた非セミノーマ stage I 症例は10例あり, 4例に再発を認めた. これら10例中PCNA陽性率75%以上の6例中4例に再発を来したが, 75%未満の4例は全例再発を認めなかった. PCNA陽性率とAgNOR数との問には, 相関関係を認めなかった.
    (結論) 以上よりPCNA陽性率はAgNOR数よりも鋭敏に精巣腫瘍原発巣の増殖速度を反映し, 非セミノーマ stage I を surveillance policy で経過観察する際の再発予測因子としての有用性が示唆された.
  • 薮崎 昇, 小松 秀樹, 田辺 信明, 多胡 紀一郎, 上野 精
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1552-1556
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 進行膀胱癌症例を対象に根治的膀胱全摘術後, 放射線照射を行い, その結果と副作用につき検討した.
    (対象と方法) 1983年10月から1991年12月の間, 山梨医大附属病院で原発性膀胱癌のために根治的膀胱全摘術を施行した症例の内, pT3b以上またはpN+の症例に術後補助療法として化学療法と骨盤部放射線照射を併用した. これに該当する症例10例を補助療法群 (I群) とし, 同一期間に膀胱全摘術後の再発に対して放射線治療を施行した6例を再発群 (II群) として, I群, II群の計16例を対象に放射線照射の効果, 副作用を検討した. 16例の内訳はpT2が1例, pT3aが2例, pT3bが6例, pT4が7例で, pN+症例は16例中1群7例, II群3例の計10例であった. 放射線照射量はI群では原則として小骨盤腔に40~50Gy, 腫瘍の残存が疑われた症例では同部に10~20Gyを追加した. II群では再発病変に対し骨盤部と腹部に平均45.6Gy照射した.
    (結果) 観察期間中8例が死亡 (内7例が癌死) し, 8例 (I群5例, II群3例) が生存中 (5年累積生存率50%) である. しかし, 照射の副作用としてイレウスが16例中9例 (56%) と高率に発症した. 6例では高度の腸管癒着を来し, 小腸大腸吻合, 小腸切除等の手術を必要とした. 9例のイレウスのための入院はのべ22回 (2.4回/1例) に及んだ.
    (結論) 根治的膀胱全摘術後の放射線治療の有効性が示唆定れたが, その副作用は重篤であり, 頻度も高かった.
  • 篠原 信雄, 原林 透, 松田 博幸, 能中 修, 野々村 克也, 小柳 知彦, 永森 聡, 大室 博, 松村 欣也, 出村 孝義
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1557-1562
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 一般にホルモン不応性転移性前立腺癌は, 難治性で, 現在のところ有効な治療法は存在しない. そのため新しい, より有効な化学療法の樹立が期待されている. 基礎的検討より, ホルモン不応性前立腺癌細胞株PC-3においてインターフェロンα2a (IFNα2a) 100IU/ml存在下で非併用時に比較して5FU感受性が2倍増加することが示された. この結果にもとづき, 我々は11名の症例にIFNα2a, 5FU併用療法を行い, その有効性および副作用を検討した.
    (対象と方法) 方法は5FUは600mg/m2を1~5日に24時間持続静脈内注入し, その間IFNα2a 300万単位を1, 3, 5日めに筋肉内投与, さらに15, 22日めに5FUは600mg/m2を急速静脈内注入し, 合せてIFNα2a 300万単位を筋肉内投与した. これを1コースとし, 有効例には原則として2コース以上投与した.
    (結果) 前立腺癌治療効果判定基準に従い評価したところ, 骨転移陽性例11例中1例でPR, CT上確認されたリンパ節転移陽性例2例はPRであった. また11例中6例で治療後前立腺抗原の50%以上の下降がえられ, そのうち3例がCRであった. 副作用では高度の骨盤抑制はみられず, 治療に伴う死亡例は認めなかった.
    (結論) これらの結果より, 本併用療法はホルモン不応性前立腺癌に対する有効な治療法の一つとなり得ることが示唆された.
  • 高橋 正幸, 木村 和哲, 奈路田 拓史, 松下 和弘, 宮本 忠幸, 川西 泰夫, 沼田 明, 湯浅 誠, 田村 雅人, 香川 征
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1563-1568
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 夜間陰茎勃起現象の記録は勃起機能検査法として早くから行われてきた検査であるが, 現在でもその重要性は変っていない. 特に器質性インポテンスと心因性インポテンスの鑑別には必須の検査であり, 陰茎周径を測定するため活性炭や水銀を用いたストレインゲージが使用されてきた.
    (対象と方法) われわれは今回, 水銀ストレインゲージにかわるインジウムとガリウムの合金製のストレインゲージを使用した新しい装置を開発しこのストレインゲージを用いた新しい夜間陰茎勃起現象記録システムが臨床に使用可能かどうかを正常ボランティアを対象に検討した.
    (結果) インジウム―ガリウムストレインゲージは, 伸展―抵抗の特性が直線的でしかも再現性が高く夜間陰茎勃起現象の記録に充分な性能を有していた. 測定データの保存, グラフ化のためのソフトウェアは簡潔で, しかもすべて日本語表示であるため操作が容易である. またこの新しいストレインゲージはディスポーザブルなのでメインテナンスが不要であり, 清潔である.
    (結論) 本システムは夜間陰茎勃起現象の記録の目的で臨床使用が可能であると考えられる.
  • 大西 規夫, 宮武 竜一郎, 橋本 潔, 際本 宏, 江左 篤宣, 杉山 高秀, 朴 英哲, 栗田 孝, 梶本 禮義
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1569-1574
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 外尿道括約筋に対する自律神経支配に関しては未だ明らかにされていない. そこで雄家兎摘出外尿道括約筋標本を用いて, adrenalin 受容体およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP) 受容体の存在について薬理学的に検討を加えた.
    (対象と方法) 外尿道括約筋標本は Krebs 液を含む2mlの組織浴槽に懸垂, 固定し, 経壁電気刺激 (EFS: electrical field stimulation) を加えて (誘発攣縮, EFS収縮), 等尺性収縮力を記録した.
    (結果) EFS収縮は tetrodotoxin (10-7M) および vecuronium (10-4M), suxamethonium(10-4M) により, ほぼ完全に抑制された.
    Norepinephrine (NE) (10-8M~10-4M) はEFS収縮には影響を与えなかったが, 用量依存性にその静止張力を増加させた. NEによる静止張力の増加作用は phentolamine (10-6M) の前処置により有意に抑制された. Clonidine (107M) および yohimbine (10-7M) はいずれもEFS収縮および静止張力に影響を与えなかった.
    Isoproterenol (10-9M~10-6M) は carbachol (10-5M) で収縮させた外尿道括約筋のEFS収縮および静止張力のいずれに対しても弛緩反応を示さなかった.
    Propranolol (10-9M~10-6M) は carbachol (10-6M) で収縮させた外尿道括約筋のEFS収縮および静止張力に影響を与えなかった.
    CGRP (10-7M~3×10-6M) も外尿道括約筋のEFS収縮および静止張力に影響を与えなかった.
    (結論) 以上の結果より, 雄家兎外尿道括約筋の収縮および弛緩にはα2受容体やβ受容体ならびにCGRP受容体の関与は認めなかったが,α1-adrenoceptor の関与が示された. この作用は体性神経刺激を修飾する形ではなく, postsynaptic に作用し, 外尿道括約筋の静止張力を高める形で関与しているものと考えられた.
  • 山形 健治, 近藤 幸尋
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1575-1582
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) Cisplatin (Cis-diamminedichloroplatinum II, 以下CDDPと略) に対する尿路性器悪性腫瘍の感受性は様々である. このCDDP感受性と抗癌剤耐性因子とされるメタロチオネイン (Metallothionein, MT), グルタチオン (Glutathione, GSH) の腫瘍組織内濃度との関連を検討した.
    (対象と方法) ヌードマウス可移植ヒト腎細胞癌株 (ACHN), 膀胱癌株 (NMB-1), 精巣腫瘍株 (NMT-1) を用いCDDPに対する感受性を測定し, さらに各腫瘍組織内MT, GSH濃度およびCDDP投与24時間後の腫瘍組織内Pt, MT, GHS濃度を測定した.
    (結果) CDDPに対する抗腫瘍効果はACHNでは無効であったが, NMB-1, NMT-1では高い感受性を示した. しかしながら腫瘍組織内Pt濃度とCDDP感受性には, 有意な相関は認められなかった. 各腫瘍対照群の腫瘍組織内MT, GSH値とCDDP感受性に有意な相関は認められなかったもののCDDP投与24時間後の腫瘍組織内MT値は, ACHNでは対照群に較べ約1.7倍と他の2株よりも高く誘導されていた. 腫瘍組織内GSH値はNMB-1, NMT-1ではCDDP投与後減少または不変であるのに対して, ACHNでは約2.1倍と対照群に比較して高く誘導されていた.
    (結論) 以上より腫瘍株ごとにCDDP投与後のMT, GSHの誘導, 合成は大きく異なり, このMT, GSHの誘導合成能が腎細胞癌株において, CDDPの抗腫瘍効果に拮抗する一因となっている可能性が示唆された.
  • 平川 和志, 大室 博, 藤枝 順一郎, 山城 勝重
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1583-1586
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱に発生し, 悪性線維組織球腫 (MFH) との鑑別診断に苦労した肉腫様癌 (sarcomatoid carcinoma) の1例を経験した.
    症例は62歳, 男性. 肉眼的血尿を主訴に近医泌尿器科を受診した. 内視鏡にて膀胱後壁から頂部にかけ広基性非乳頭状腫瘍を認め, TUR-Btを施行された. 病理組織所見にてMFHが疑われ, その後の治療を目的に当科を紹介された. CT, 骨シンチ等の検査にて他臓器転移やリンパ節転移は認められなかった. 1991年4月25日, 浸潤性膀胱腫瘍の診断にて膀胱全摘除, 骨盤リンパ節郭清, 回腸導管造設術を施行した. 病理組織検査では明らかな上皮性腫瘍を示す部位は認められず, 腫瘍細胞は紡錘形細胞で構成され, 部分的に花むしろ状構造 (storiform pattern) を示していた. このためH-E染色ではMFHとの鑑別診断がつかなかったが, 免疫染色にて上皮性腫瘍細胞であることを示す cytokeratin が陽性であり, 膀胱原発肉腫様癌と診断した. 本症例のごとく, 明らかな上皮性腫瘍細胞の成分を全く含まない肉腫様癌は極めて稀であり, MFH等の非上皮性腫瘍との鑑別診断には十分に慎重でなければならない.
  • 小山 一郎, 山崎 雄一郎, 中村 倫之助, 家後 理枝, 中村 道郎, 小林 裕, 内田 靖子, 市川 由紀, 東間 紘
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1587-1590
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性. 約1年半にわたり間欠的に持続する肉眼的血尿を主訴に当科受診. 諸検査の結果, 膀胱頂部に非乳頭状腫瘍を認め尿膜管癌と診断され, 膀胱全摘, 尿膜管全摘, およびリンパ節郭清術を施行した. 病理所見は adenocarcinoma, papillotubuloma, ly3+, v2+, pT3 (urachal carcinoma, most likely) であった. この症例では術前の血清CA19-9値が著明に上昇しており, 摘出組識もCA19-9による高い染色性を認めた. 手術治療により血清CA19-9値は正常範囲にまで低下したが, その後の治療経過と血清CA19-9値との間にも高い相関関係を認めた. すなわち, CA19-9の尿膜管癌における腫瘍マーカーとしての特異性は不明であるものの, 高値を示す症例においては治療効果の評価, および経過観察時におけるモニタリングの指標としてCA19-9を測定することはきわめて有意義であると考えられた.
  • 小川 正至, 古堅 進亮, 鈴木 博雄, 川口 安夫, 大石 幸彦
    1995 年 86 巻 10 号 p. 1591-1594
    発行日: 1995/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性. 25年前, 左巨大水腎症にて当院で左腎摘出術を施行. 左背部痛と発熱を主訴に受診し, 腹部CTで左後腹膜腔に一部石灰化した壁に囲まれた嚢腫様腫瘤を認め, 左後腹膜感染性嚢腫と診断した. 入院後, 嚢胞穿刺を行い, 内溶液は黄褐色膿汁様で670mlであった. 内溶液のCA19-9は高値を示し, 細胞診は class II であった. 患者の強い希望により退院となったが, 7ヵ月の間に2回の再発を認め95%エタノール固測やミノマイシン注入を行ったが再発したため, 結局, 嚢胞摘出術を施行した. 術前, リンパ嚢腫との鑑別にリンパ管シンチグラフィを用いた. 術後, 現在まで再発は認められていない. CA19-9は泌尿器系悪性腫瘍のマーカーとして有用かどうか検討されているが, 良性疾患でも上昇することがある. 本症例では嚢胞の内溶液のCA19-9が高値を示し悪性腫瘍の合併が疑われたが, 病理組織学的には悪性所見を認めなかった. 後腹膜嚢腫の治療は, 悪性腫瘍との鑑別のために, 嚢胞穿刺による細胞診や腫瘍マーカーの検査を含む精査が望ましいと考えられた.
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