1999 年 90 巻 3 号 p. 466-469
経尿道的前立腺切除術後にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) による尿路感染症を発症し, 敗血症, 髄膜炎を併発した1例を経験した. 患者は, 69歳, 男性で, 糖尿病を有していた. 前立腺肥大症にて経尿道的前立腺切除術を施行し, 術後4日目に尿道留置カテーテルを抜去したところ, 高度の発熱, 血尿を認め, 尿および血液培養でMRSAが分離された. 術後6日目から腰痛を認め, 髄液からもMRSAが分離された. 感受性のあった arbekacin あるいは vancomycin の単剤投与は効果が認められなかったが, fosfomycin, vancomycin および人免疫グロブリンの併用療法は有効で, 炎症は消退した. 尿路におけるMRSAの病原性は低いとされるが, 症例によっては敗血症, 髄膜炎に進退する重症尿路感染症の発症もあり得ると考えられた. MRSAによる重篤な感染症例には, 抗生剤の適切な選択とともに, 人免疫グロブリンの使用も考慮すべきことが示唆された.