2001 年 92 巻 5 号 p. 566-571
(背景と目的) 限局性前立腺癌に対する高線量率組織内照射療法は, 手術に比べて尿失禁, 勃起不全などの合併症が少ない. しかし, 組織内照射を連続して数回施行する場合, 線源挿入用のアプリケーターを長時間持続的に留置する必要があり, 患者の苦痛は大きい. 我々は, アプリケーターの材質および留置方法の改良により, 患者の治療中のストレスの軽減を試みた.
(対象および方法) 限局性前立腺癌症例20例に対して高線量率組織内照射療法を施行した. 経直腸エコーガイド下にて, 会陰部に当施設で考案, 作製したテンプレートを固定してアプリケーターを前立腺内に刺入した. そのうち14例は, 刺入後30時間テンプレートを装着したままでステンレス製のアプリケーターを留置した (A群). 一方, 6例はポリオキシメチレン樹脂 (POM) 製のアプリケーターを使用し, 刺入後テンプレートは除去し, 30時間このアプリケーターのみを留置した (B群). 患者の治療中のストレスに関して, アプリケーター留置中における腰痛, 不便度および介助の必要性, 睡眠を, また術後のQOLに関して, 尿失禁, 性機能を評価した.
(結果) B群患者の治療中のストレスはA群と比較し明らかに少なかった. 尿失禁, 性機能に関しては, 術前, 後でA, B両群間ともに差は認められなかった.
(結論) 限局性前立腺癌に対する高線量率組織内照射療法のアプリケーターの材質および留置方法の改良により, 治療中の患者のストレスを著しく軽減することができた.