日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
92 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 山中 弥大郎, 石田 肇, 岡田 清己, 根本 則道
    2001 年 92 巻 5 号 p. 545-553
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺上皮に対し, 3種類の抗サイトケラチン抗体 (34βE12, 35βH11, RCK108) を用いた免疫組織化学的な検討を行った. 基底細胞に特異的に染色される抗サイトケラチン抗体 (34βE12) については, 様々な前立腺病変に免疫組織化学染色を行い評価した.
    (対象と方法) 対象は, 生検あるいは手術療法により採取した前立腺組織131例である. 前立腺病変はH-E染色にて前立腺肥大症 (BPH), 前立腺癌 (PCA), atrophic acini, atypical adenomatous hyperplasia (AAH), prostatic intraepithelial neoplasia (PIN) に分類した. これらの前立腺病変にたいして3種類のサイトケラチン抗体を用いた免疫組織化学染色をABC法あるいはLSAB法を用いて行い評価した.
    (結果) BPHでは, 35βH11は主に分泌細胞に染色が認められ, RCK108は分泌細胞, 基底細胞共に染色が認められた. PCAでは, 35βH11はいずれの腫瘍分化度にも高い染色性を認めたが, RCK108は腫瘍分化度が低くなるほど染色性は低下した. 34βE12は基底細胞のみに染色され, 分泌細胞や癌細胞には染色されなかった. 34βE12での免疫化学染色において, BPHではほとんどの症例で陽性を示したが, PCAでは陽性症例は認められなかった. また, atrophic acini, AAHは, BPHと同様な陽性染色を示したが, high-grade PINでは断続的な染色性や陰性症例が多くみられた.
    (結論) 前立腺肥大症の分泌細胞においては, 35βH11, RCK108とも強い染色性を認めた. 前立腺癌細胞では, RCK108は腫瘍分化度が低くなるほど染色性が低下する傾向が認められた. 34βE12陽性であれば良性前立腺病変を強く示唆することになり, 病理診断の補助手段となり得ると考えられた.
  • 溝口 裕昭, 矢野 明, 橋本 邦宏, 大口 泰助, 江本 昭雄, 大野 仁, 奈須 伸吉
    2001 年 92 巻 5 号 p. 554-559
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 腎盂および尿管癌に対する腹腔鏡補助下腎尿管全摘除術の有用性を検討する.
    (対象) 1997年5月から2000年12月までに腹腔鏡補助下腎尿管全摘除術が施行された腎盂癌7例および下部尿管癌4例 (男性10, 女性1例, 平均年齢68.5歳, 左9, 右2例) を対象とした.
    (方法) 全身麻酔下, 半側臥位にてまず腹腔鏡下腎摘除術を行う. 腎盂癌では同側の副腎も含めて剥離. 原則として尿管は途中切断せず下腹部に斜切開を加え腎と共に摘出する. 腎の剥離は3例は経腹腔的に8例は経後腹膜的に行った.
    (結果) 2例は開放手術に変更された. 腹腔鏡下に手術できた9例の平均手術時間は272分, 平均出血量は313ml. 平均切開創は11.3cm. 創感染を4例に認めたが, 腹腔鏡下手術に関連した合併症は認められなかった. 短期的な観察ではあるが, 開放手術群との間に合併症および再発率において差は認められなかった.
    (考察) 腹腔鏡補助下腎尿管全摘除術は開放手術に比べ腰部斜切開創がないために術後の創痛が軽減される利点をもつ. さらに合併症および再発率においても有意差は認められない. 従来の開放手術に準じた手順とするためには経後腹膜的アプローチの方が望ましいと思われる.
    (結論) 本法は厳密なリンパ節郭清, 手術時間の短縮など課題は多いが, T1までの腎盂癌および下部尿管癌に対しては開放手術に代わりうる安全で有用な術式になるものと思われる.
  • 小児例での検討
    山崎 雄一郎, 柿崎 秀宏, 坂井 清英, 多田 実, 長 雄一, 東間 紘, 宮野 武, 中井 秀郎, 寺島 和光, 石堂 哲郎, 臼田 ...
    2001 年 92 巻 5 号 p. 560-565
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 学童期以降の小児の自己導尿管理を高めるために, 親水性カテーテルを含むポケットサイズのカテーテルキットを開発しカテーテルの潤滑特性と臨床上の有効性を評価した.
    (対象と方法) ポケットサイズのフィルム容器内に親水性コーティングしたポリウレタン製カテーテルと滅菌水入りパックを一緒にパッケージすることでキット化した. カテーテルの潤滑特性は摺動抵抗の測定により評価した. 臨床評価にあたって対象は全国17施設で自己導尿を施行している6歳以上の男児とした. 同意の得られた32名 (平均年齢11.6歳) にカテーテルキットを1週間連続使用してもらい, 使用前後で評価スコアによるアンケート調査を行うとともに尿沈渣, 尿培養検査を施行した.
    (結果) 親水性カテーテルの摺動性は現行のカテーテルに潤滑剤を塗布した場合と同等もしくはそれ以上の良好な値を呈した. 5段階評価スコアによる従来型カテーテルとキットの比較では携帯性, 操作性の2点で有意にキットの評価が高かった. 挿入性に関しては有意差を認めなかったが, キットでは抜去時に尿道に引っかかるという意見を複数認めた. 総合評価では有意にキットの評価が高く, 32名中30名 (94%) が継続して使用したいという希望を示した. 尿検査ではキット使用後に臨床上問題となる血尿の増加や新たな顕性尿路感染は認めなかった.
    (結論) 親水性カテーテルキットは, 従来のカテーテルにくらべ多数の小児で自己導尿時の満足度が高く, 患児のおかれた状況によっては自己導尿を長期継続していく上で有用であると考えられた.
  • 治療中ストレスの軽減およびQOL改善への試み
    井上 啓史, 笠原 高太郎, 辛島 尚, 井上 雄一郎, 執印 太郎, 刈谷 真爾, 猪俣 泰典, 吉田 祥二
    2001 年 92 巻 5 号 p. 566-571
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 限局性前立腺癌に対する高線量率組織内照射療法は, 手術に比べて尿失禁, 勃起不全などの合併症が少ない. しかし, 組織内照射を連続して数回施行する場合, 線源挿入用のアプリケーターを長時間持続的に留置する必要があり, 患者の苦痛は大きい. 我々は, アプリケーターの材質および留置方法の改良により, 患者の治療中のストレスの軽減を試みた.
    (対象および方法) 限局性前立腺癌症例20例に対して高線量率組織内照射療法を施行した. 経直腸エコーガイド下にて, 会陰部に当施設で考案, 作製したテンプレートを固定してアプリケーターを前立腺内に刺入した. そのうち14例は, 刺入後30時間テンプレートを装着したままでステンレス製のアプリケーターを留置した (A群). 一方, 6例はポリオキシメチレン樹脂 (POM) 製のアプリケーターを使用し, 刺入後テンプレートは除去し, 30時間このアプリケーターのみを留置した (B群). 患者の治療中のストレスに関して, アプリケーター留置中における腰痛, 不便度および介助の必要性, 睡眠を, また術後のQOLに関して, 尿失禁, 性機能を評価した.
    (結果) B群患者の治療中のストレスはA群と比較し明らかに少なかった. 尿失禁, 性機能に関しては, 術前, 後でA, B両群間ともに差は認められなかった.
    (結論) 限局性前立腺癌に対する高線量率組織内照射療法のアプリケーターの材質および留置方法の改良により, 治療中の患者のストレスを著しく軽減することができた.
  • 笠原 高太郎, 井上 啓史, 辛島 尚, 井上 雄一郎, 執印 太郎, 刈谷 真爾, 猪俣 泰典, 吉田 祥二
    2001 年 92 巻 5 号 p. 572-578
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 近年, 限局性前立腺癌に対して, 従来の永久刺入線源を用いた低線量率組織内照射に比較して, 治療精度の向上, 治療医療従事者の被曝解消の目的に, 高線量率線源を用いた組織内照射が行われ, 良好な治療効果が報告されている. 我々は, 今回, 限局性前立腺癌患者17例に対して, Ir-192を用いた高線量率組織内照射および外照射併用療法を施行したので報告する.
    (対象および方法) 対象は1999年6月より2000年8月までに, Ir-192を用いた高線量率組織内照射および外照射併用療法を施行した前立腺癌患者17例で, 年齢は中央値72歳 (48~81歳), 臨床病期は, Stage B1:5例, Stage B2:7例, StageC (精嚢浸潤は除く): 5例であった. 術前内分泌療法を非施行の10例の照射直前のPSAは中央値15.3ng/ml (8.93~222.32ng/ml) であった. 治療スケジュールは, 組織内照射を6Gy×3回/2日間施行後, 外照射 (40 or 45Gy) を施行した. アプリケーターの刺入はTRUSガイドで施行し, 組織内照射はアフターローデイング法をとった. 治療後は定期的に直腸内指診, PSA測定, TRUSガイド下前立腺生検にて経過観察した. 観察期間は中央値8ヵ月 (2~14ヵ月) であった.
    (結果) 治療前内分泌療法が施行されていない10例において, 外照射終了後3ヵ月目で, PSAが4ng/ml未満となった症例は4例 (40%) で, 他の6例においてもPSA値は平均48%減少していた. また, 治療前内分泌療法非施行10例中8例に対して治療後3ヵ月後に前立腺生検を施行し, Grade 0b:4例, Grade 1:1例, Grade 3:3例であった. 合併症は, 内照射施行中, 腰痛が15例 (82.3%), 発熱5例 (29.4%), アプリケーター抜去直後に血尿が5例 (29.4%), うち1例は膀胱タンポナーデとなり, 膀胱灌流を必要とした. 外照射による急性合併症は, 頻尿が9例 (52.9%), 下痢が5例 (29.4%), 肛門痛が3例 (17.6%) で, いずれも軽度であった.
    (結論) 今回, 我々の行った限局性前立腺癌に対するIr-192を用いた高線量率組織内照射および外照射併用療法は, 合併症も少なく, 比較的安全な治療であると考える. 治療効果については, 現在のところ, 他施設に比較して劣っているが, 観察期間が短期であり, 今後, 多数症例での長期間の経過観察を行い, 治療効果を判定する必要がある.
  • 牛田 博, 小泉 修一, 加藤 研次郎, 岡田 裕作
    2001 年 92 巻 5 号 p. 579-582
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    21歳, 女性. 4年前よりSLEの診断で他院にてプレドニゾロン, ミゾリビン処方されていた. 2週間前より右下腹部痛出現し, 1週間前より右背部痛も認めるようになり当院受診. 腹部造影CT検査にて右腎周囲から十二指腸水平脚, 腸腰筋前面の後腹膜膿瘍を認め, 精査加療目的で入院となった. 原因として, 免疫抑制剤の内服が誘因となって右腎孟腎炎などの感染が周囲に波及したものと考え, 右シングルJカテーテルを留置し, また後腹膜膿瘍部にペンローズドレーンを留置してドレナージをはかった. 後腹膜膿瘍は著明に縮小したが, ドレナージ後17日目に41℃の発熱と急激な意識レベルの低下および血圧の低下, 眼球の下方偏位が出現し, 頭部CT施行した. 脳幹部全体の梗塞像と一部に出血を認めた. ステロイドのパルス療法施行したが, 6日後に死亡した.
  • 藤田 哲夫, 本田 直康, 馬場 志郎
    2001 年 92 巻 5 号 p. 583-585
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 54歳男性. 左腎細胞癌にて根治的左腎摘除術を施行後, 約2年間のIFN療法を施行した. 治療終了後, IFN療法の副作用と考えられる甲状腺機能低下症を発症し, レボチロキシンナトリウムの投与を開始した.
    IFN療法による甲状腺機能低下症は, 各種肝炎治療時の副作用としての報告が散見され, それらの殆どが治療中に発症しているが, 治療後に発症した腎細胞癌に対する報告は極めて稀である. IFN療法による甲状腺機能低下症は一過性であり, 甲状腺ホルモン剤補充療法により比較的速やかに正常化するものとされている. しかし, 甲状腺機能低下症は放置すれば重症化しうる疾患でもある. 腎細胞癌に対するIFN療法においても, 治療中及び治療後に甲状腺機能低下症を発症する可能性を念頭におき治療すべきであると考えられた.
  • 梶川 恒雄, 野沢 立, 尾張 幸久, 藤澤 宏光, 金子 卓司, 野呂 一夫, 高田 耕
    2001 年 92 巻 5 号 p. 586-588
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    左尿管結石に対するESWLにより, 腸管穿孔を起こした症例を経験したので報告する. 症例は69歳, 男性で, 1996年3月に両側総腸骨動脈瘤に対してグラフト置換術を受けていた. 1999年2月, 左側腹部痛が出現, レントゲン検査で左尿管結石の診断となった (lt. U1, 14×8mm). 結石は骨盤部まで下降後, 下降しなくなったため, 入院の上, 3月30日, 腹臥位でESWLを施行した. 終了直後より左下腹部痛を訴え, 鎮痛剤で治まらないため, 3月31日, CTを施行した. 明らかな異常所見を認めなかったが, その後も痛みが続き, 4月2日には, 筋性防御も認めるようになった. 再度CTを施行したところ, free air, イレウス所見を認めたため, 緊急手術を施行した. トライツ靭帯から130cmの空腸に, 2mm大の穿孔を2ヵ所認め, ESWLによる腸管穿孔と診断した. 術後経過は良好で, 4月23日, 退院となった. ESWLによる腸管穿孔は, 極めて稀な合併症であるが, 腸管の癒着の可能性のある既往歴, 腹臥位でのESWLは, リスクファクターと考えられた.
  • 岩城 秀出洙, 梶田 洋一郎, 清水 洋祐, 山内 民男
    2001 年 92 巻 5 号 p. 589-592
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    73歳, 男性. 1999年9月初旬より全身倦怠感と微熱が出現し, 当院内科を受診. 腹部CTにて左腎下極に3.5cmの腫瘤を認め, ガリウムシンチでの同部の集積像もみられたことから, 腎原発悪性リンパ腫の疑いで, 1999年11月10日に当科紹介受診となった. 検尿所見には異常なく, 血液生化学検査ではCRPおよび可溶性インターロイキン2受容体 (sIL-2R) の軽度上昇と赤沈の亢進以外には異常所見を認めなかった. 腹部MRIで, 腫瘤はT1強調画像で等信号, T2強調画像で低信号を示し, 血管造影では腫瘍性血管は認めなかった. 以上の検査結果から, 乏血管性腎細胞癌あるいは腎原発の悪性リンパ腫を疑い, 1999年12月20日に左腎摘除術を施行した. 腫瘤はゴム様硬, 淡黄白色均一, 充実性腫瘤で, 辺縁は不整であったが周囲との境界は明瞭であった. 病理組織学的所見にて腫瘤は形質細胞, 小リンパ球, 好中球, 好酸球の浸潤を伴う線維性の組織から成り, 炎症性偽腫瘍と診断された. 術後経過は良好で2000年1月18日に退院となった. 腎に発生した炎症性偽腫瘍は極めて稀で, 自験例は内外で15例目である.
  • 前澤 卓也, 米瀬 淳二, 塚本 哲郎, 石井 信行, 長谷川 雄一, 福井 巖, 石川 雄一
    2001 年 92 巻 5 号 p. 593-596
    発行日: 2001/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 38歳男性. 16歳の頃より高血圧を指摘されるも放置していた. 検診の超音波検査にて上腹部腫瘍を発見されたことから精査を受け, CTでは上腹部大動静脈間に径8×8cmの腫瘍の他に, 大動脈分岐部に4×4cmの腫瘍が認められた. 血中ノルアドレナリンと尿中VMAの高値, 及びMIBGシンチグラムにて上記腫瘍の他, 胸椎に集積像が認められ, 悪性褐色細胞腫を疑われ, 当科紹介となった. 画像診断上副腎には異常を認めないこと, 開放生検での病理所見及びMRIでの胸椎破壊像から, 転移性副腎外悪性褐色細胞腫と診断した. 化学療法としてCYVADIC療法を2コース施行したが, 原発巣, 転移巣共に腫瘍径に変化無く, 高血圧の改善も十分ではなく, Grade 3の白血球減少を認めた. そこで化学療法の目的を根治的から姑息的に変更し, CVD療法を標準的投与量の60%量とし通院にて月一度の間隔で投与した. 4コース終了後には血圧が正常化し, 降圧剤投与を中止した. これまで3年半の間に計36コース施行し, 腹部CT上腫瘍径に変化を認めないが, 血中ドーパミン値はほぼ正常化, ノルアドレナリン値は低下, また胸椎転移による腰背部痛も消失した. また, 副作用として, 便秘, 化学療法当日の全身倦怠感を認めるも骨髄抑制に高度なものはなく, 現在も通院治療にて社会復帰を続けている. 今後も同様に治療継続の予定である.
feedback
Top