(目的) 近年, 限局性前立腺癌に対して, 従来の永久刺入線源を用いた低線量率組織内照射に比較して, 治療精度の向上, 治療医療従事者の被曝解消の目的に, 高線量率線源を用いた組織内照射が行われ, 良好な治療効果が報告されている. 我々は, 今回, 限局性前立腺癌患者17例に対して, Ir-192を用いた高線量率組織内照射および外照射併用療法を施行したので報告する.
(対象および方法) 対象は1999年6月より2000年8月までに, Ir-192を用いた高線量率組織内照射および外照射併用療法を施行した前立腺癌患者17例で, 年齢は中央値72歳 (48~81歳), 臨床病期は, Stage B1:5例, Stage B2:7例, StageC (精嚢浸潤は除く): 5例であった. 術前内分泌療法を非施行の10例の照射直前のPSAは中央値15.3ng/ml (8.93~222.32ng/ml) であった. 治療スケジュールは, 組織内照射を6Gy×3回/2日間施行後, 外照射 (40 or 45Gy) を施行した. アプリケーターの刺入はTRUSガイドで施行し, 組織内照射はアフターローデイング法をとった. 治療後は定期的に直腸内指診, PSA測定, TRUSガイド下前立腺生検にて経過観察した. 観察期間は中央値8ヵ月 (2~14ヵ月) であった.
(結果) 治療前内分泌療法が施行されていない10例において, 外照射終了後3ヵ月目で, PSAが4ng/ml未満となった症例は4例 (40%) で, 他の6例においてもPSA値は平均48%減少していた. また, 治療前内分泌療法非施行10例中8例に対して治療後3ヵ月後に前立腺生検を施行し, Grade 0b:4例, Grade 1:1例, Grade 3:3例であった. 合併症は, 内照射施行中, 腰痛が15例 (82.3%), 発熱5例 (29.4%), アプリケーター抜去直後に血尿が5例 (29.4%), うち1例は膀胱タンポナーデとなり, 膀胱灌流を必要とした. 外照射による急性合併症は, 頻尿が9例 (52.9%), 下痢が5例 (29.4%), 肛門痛が3例 (17.6%) で, いずれも軽度であった.
(結論) 今回, 我々の行った限局性前立腺癌に対するIr-192を用いた高線量率組織内照射および外照射併用療法は, 合併症も少なく, 比較的安全な治療であると考える. 治療効果については, 現在のところ, 他施設に比較して劣っているが, 観察期間が短期であり, 今後, 多数症例での長期間の経過観察を行い, 治療効果を判定する必要がある.
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