日本泌尿器科学会雑誌
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前立腺癌に合併し胃癌の陰茎皮膚転移を呈した一例
佐藤 裕之大木 隆弘門間 哲雄斉藤 史郎新関 寛徳廣瀬 茂道倉持 茂
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2001 年 92 巻 6 号 p. 628-631

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抄録

癌腫が皮膚に転移することはまれであり, その頻度は0.7~9%と報告されている. 転移部位としては頸部や顔面等の上半身が多いとされている. 今回我々は前立腺癌を合併した胃癌の会陰部から陰茎にかけての皮膚転移により陰茎の形態変化を呈した症例を経験した. 症例は72歳男性. 胃癌による胃全摘出術後4年目に会陰部より陰茎にかけ違和感および皮膚硬化を認め当科受診した. 血清PSA値10.6ng/mlと高値であったため前立腺癌およびその皮膚転移が疑われた. 陰茎皮膚生検および前立腺針生検を施行した結果, 前立腺は中分化型腺癌であり, 皮膚は浸潤性の腺癌であった. 免疫組織化学的検索にて前立腺は抗PSA抗体陽性, 抗CEA抗体陽性であったのに対し, 皮膚組織はPSA抗体陽性, 抗CEA抗体陽性であり, 胃癌の組織と一致した. 以上より胃癌の陰茎皮膚転移と診断された. ドキシフルリジンの内服とLH-RHアナログ投与による治療を開始したが, 胃癌の進展のために7ヵ月後に死亡した. 胃癌の皮膚転移は男性においては進行胃癌の約6%に認められるとの報告があるが, 胃癌の陰茎および会陰部への皮膚転移の報告は過去には見られない.

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