日本泌尿器科学会雑誌
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92 巻, 6 号
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  • 10例の検討
    服部 良平, 小野 佳成, 後藤 百万, 吉川 羊子, 平林 総, 山田 伸, 大島 伸一
    2001 年 92 巻 6 号 p. 603-608
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (対象) 1999年12月から2000年6月までの期間に術前臨床診断がT2以下の前立腺癌患者10例に腹腔鏡下前立腺全摘除術を行った. 年齢は平均72歳で, 術前臨床病期はT1c7例, T2 3例であった.
    (手術方法) フランスの Guillonneau 等の方法に準じて経腹的に手術を行った. 私どもは術前に両側尿管内にDJカテーテルを留置し術中に尿管口の確認を容易にさせ, 陰茎背静脈の処置に Endo GIAを用いた. 膀胱頚部をできるだけ温存できるように超音波メスを用いて前立腺膀胱移行部の切離を行った.
    (結果) 手術時間は平均8.1時間であり, 出血量は平均859mlであった. 1例は尿道膀胱吻合操作に長時間を要したため, 開創術に変更した. 1例は陰茎背静脈よりの出血が多量にあり, 開創にて対処しそのまま尿道膀胱吻合を行った. 術中合併症としてトロカー挿入時に膀胱損傷が1例にみられたが, 鏡視下に縫合, 修復を行った. 術後合併症として症例6は術後7日目に操作孔に腸管が嵌頓するヘルニアを合併したため, 緊急手術にて腸管の整復術を行った. 手術後に鎮静剤を必要としたのは3例のみで他は鎮静剤を用いなかった. 術後の尿道カテーテル留置期間は平均17日であり, カテーテル抜去後の尿禁制は平均40日で得られ, 術後の入院期間は平均32日であった. 病理結果ではpT28例pT32例であり, 全例リンパ節転移みられず, 断端も陰性であった.
    (結論) 腹腔鏡下前立腺全滴除術は確実な尿道膀胱吻合により, 早期のカテーテル抜去ができる可能性があり, 早期の社会復帰につながる有用な術式である.
  • 栃木 達夫, 川村 貞文, 沼畑 健司, 徳山 聡, 桑原 正明, 洞口 龍夫, 佐藤 滋彰
    2001 年 92 巻 6 号 p. 609-614
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 名取市での前立腺癌検診のデータを基に, 検診時PSA値が gray zone であった例を対象としてPSA density (PSAD) を利用する生検対象者絞り込みの有用性について retrospective に検討した.
    (対象と方法) 55歳以上の男性希望者を対象とした前立腺癌検診を受診し, 精密検診として経直腸的超音波検査 (TRUS) とTRUS下系統的前立腺生検を受けた者の中で, 検診時PSA値が4.1~10.0ng./mlでPSADを算出できた者を対象とした.
    (結果) 118例が対象となり, うち25例が癌であった. 癌例と非癌例の平均PSA値に有意差はなかったが, 平均PSADには有意差を認めた (p<0.0001). PSAとPSADのROC曲線の各AUCは, 0.611と0.830で有意差を認めた (p<0.001). PSADの cut-off 値を0.15とした時の感度, 特異度, 陽性反応適中度, 診断効率は, 88%, 52.7%, 33.3%, 46.4%であるが, 0.18とすると80%, 72%, 43.5%, 57.6%であった. PSADの cut-off 値としては, 診断効率を重視すれば0.18, 感度を重視すれば0.15がよいと考えられた.
    (結論) PSA値 gray zone 例におけるPSADを利用する生検対象者の絞り込みは有力な方法と考えられるが, cut-off 値に関しては更に多数例での検討が必要である.
  • 松本 富美, 島田 憲次, 細川 尚三, 上仁 数義
    2001 年 92 巻 6 号 p. 615-618
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 当センターで経験した一側性多嚢腎症例の臨床経過をもとに最近の治療方針につき検討を行った.
    (対象と方法) 対象は, 1991年8月から1999年2月の7年7ヵ月間に新生児期までに超音波検査にて一側性の多嚢腎を指摘された48例 (男児30例, 女児18例) で, 全例に核医学検査が施行され, 患側にRIの集積が無いことが確認された. 観察期間は15ヵ月から8年10ヵ月 (平均4年6ヵ月).
    (結果) 出生前に診断されたのは48例中45例 (93.8%) で, 胎児期および周産期に多嚢腎による隣接臓器圧迫のため mass reduction を必要とした症例はなかった. 7例 (14.6%) に軽度の膀胱尿管逆流: VUR (同側5例, 反対側2例) がみられた. 患側に尿管瘤または異所開口尿管を伴う2例に腎尿管摘除術が行われた. 多嚢腎が増大傾向を示す症例はなかったが, 2例の男児は5歳を過ぎても縮小傾向がみられず, 親の希望にて腎摘除術を行った. 反対側の尿路異常に対して, 3例に腎盂形成術, 2例に尿管尿管吻合術が施行された. 反対側が低異形成腎であった1例に腎不全を認めている. 高血圧症状, 悪性新生物を認めた症例はなかった.
    (結論) 以上の所見より, 一側の多嚢腎を有する新生児は多嚢腎自体が手術の適応となることは稀で, 反対側の腎・尿路に重篤な異常がなければ保存的治療が可能である. 自験例では認められなかったが, 高血圧や悪性新生物の発生の危険から長期の follow-up が望ましいといわれており, 家族の中には繰り返す外来通院・検査に大きなストレスを抱く者もある. そのため手術 (多嚢腎摘除術) は親の要求があれば治療の選択肢の一つと考え得る.
  • 李 慶寿, 小泉 貴裕, 中逵 弘能, 小島 圭二, 山本 明, 川西 泰夫, 沼田 明
    2001 年 92 巻 6 号 p. 619-623
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 小児包茎に対する吉草酸ベタメタゾン含有軟膏の有用性, およびその至適濃度を検討した.
    (対象と方法) 1996年8月から2000年5月までに当科を受診した真性包茎の患児69例 (1~12歳, 中央値3歳) を対象とした. 全例にステロイド軟膏を1日に2回, 包皮口狭小部に塗布し最大4週間の治療をおこなった. 使用したステロイド軟膏は吉草酸ベタメタゾン含有軟膏 (リンデロン®VG軟膏) で, また吉草酸ベタメタゾンの濃度は0.12%, 0.05%, 0.025%の3種類に調整したものを用いた. 治療終了後にほぼ完全に包皮翻転可能となったものを著効とした. 外尿道口露出を認めたものを有効とした. 全く変化のないものは無効とした. また治療終了後3カ月目に再発の有無や有害事象の発生について評価した.
    (結果) 69例全例で4週間の治療が可能であった. 全体での有効率は85.5%であった. 0.12%, 0.05%, 0.025%軟膏では有効率はそれぞれ96.8%, 82.8%, 55.6% (P=0.0001) であり, 0.12%が最も有効であった. 再発は3例 (4.3%) に認められた. ステロイド軟膏による有害事象を認めたものはなかった.
    (結論) 小児包茎に対する吉草酸ベタメタゾン含有軟膏は, 有効で, また合併症もなく, まず第1に行われるべき治療法であると思われる.
  • 車 英俊, 青 輝昭, 須山 一穂, 奥野 紀彦, 溝口 秀之, 村山 雅一, 小柴 健, 本告 匡
    2001 年 92 巻 6 号 p. 624-627
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    患者は70歳, 男性. 頻尿と不完全尿閉を主訴に当科を受診した. 直腸診では, 直腸前壁に鶏卵大で弾性硬の腫瘤を触知した. 排泄性尿路造影では, 両側の高度な水腎・水尿管を認めた. 経直腸的超音波断層検査, 骨盤部CTスキャン, およびMRIでは, 前立腺と直腸の間隙に径5cm大の腫瘤像を認め, 前立腺および直腸との境界は一部不明瞭だった. 組織診のために行った針生検で前立腺平滑筋肉腫が示唆されたため, 膀胱前立腺全摘・代用膀胱造設術を行い, 一部直腸との剥離が不可能であったため直腸部分切除を加えた. 摘除標本の病理組織学的診断は, 直腸原発 gastrointestinal stromal tumor (GIST) であった. 直腸原発GISTは稀な疾患で, 前立腺と接している場合には前立腺平滑筋肉腫との鑑別が困難である.
  • 佐藤 裕之, 大木 隆弘, 門間 哲雄, 斉藤 史郎, 新関 寛徳, 廣瀬 茂道, 倉持 茂
    2001 年 92 巻 6 号 p. 628-631
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    癌腫が皮膚に転移することはまれであり, その頻度は0.7~9%と報告されている. 転移部位としては頸部や顔面等の上半身が多いとされている. 今回我々は前立腺癌を合併した胃癌の会陰部から陰茎にかけての皮膚転移により陰茎の形態変化を呈した症例を経験した. 症例は72歳男性. 胃癌による胃全摘出術後4年目に会陰部より陰茎にかけ違和感および皮膚硬化を認め当科受診した. 血清PSA値10.6ng/mlと高値であったため前立腺癌およびその皮膚転移が疑われた. 陰茎皮膚生検および前立腺針生検を施行した結果, 前立腺は中分化型腺癌であり, 皮膚は浸潤性の腺癌であった. 免疫組織化学的検索にて前立腺は抗PSA抗体陽性, 抗CEA抗体陽性であったのに対し, 皮膚組織はPSA抗体陽性, 抗CEA抗体陽性であり, 胃癌の組織と一致した. 以上より胃癌の陰茎皮膚転移と診断された. ドキシフルリジンの内服とLH-RHアナログ投与による治療を開始したが, 胃癌の進展のために7ヵ月後に死亡した. 胃癌の皮膚転移は男性においては進行胃癌の約6%に認められるとの報告があるが, 胃癌の陰茎および会陰部への皮膚転移の報告は過去には見られない.
  • 市野 みどり, 鶴田 崇, 小川 秋實, 市川 徹郎, 石井 恵子, 富田 康敬
    2001 年 92 巻 6 号 p. 632-635
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    成人では稀な神経芽細胞腫の一例を経験した. 症例は34歳男性, 右鼠径リンパ節腫大にて受診した. CT上後腹膜リンパ節から右鼠径部に一塊の腫瘍を認め, この部に骨シンチで異常集積を認めた. 生検所見から悪性腫瘍と考えられたので, CDDP, VP-16, BLM, ADMによる化学療法を施行したが無効であった. その後, 生検標本の免疫染色の結果から神経芽細胞腫と診断した. CPM, VCR, ADM, DTIC, CDDP, VP-16による化学療法で明らかに腫瘍の縮小がみられたため, 末梢血幹細胞移植を併用して大量化学療法を施行した. わずかな残存腫瘤に対し後腹膜リンパ節郭清術を施行した. 摘除組織の一部に高分化神経芽細胞腫を認めた. その後の経過観察6ヵ月で再発を認め, CPM, VCR, ADM, DTIC, CDDP, VP-16による化学療法, 放射線療法行うも無効であった. 手術後1年で癌死した.
  • 深津 顕俊, 岡村 菊夫, 西村 達弥, 小野 佳成, 大島 伸一
    2001 年 92 巻 6 号 p. 636-639
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    後腹膜腔鏡下膀胱憩室切除術で治療に成功した膀胱頚部閉塞による巨大な膀胱憩室の症例を報告する. 症例は71歳男性, 主訴は排尿障害, 排尿痛, 混濁尿. 前立腺肥大症と巨大膀胱憩室による排尿障害を認めたため, 1998年9月24日, 腹腔鏡下手術で憩室を切除し引き続いて経尿道的前立腺切除術を施行した. 術前に, 左尿管に尿管ステントを, 憩室と膀胱にそれぞれ8Frフォーリーカテーテルを留置した. バルーンダイレーターを使用して膀胱前腔を拡張し, 操作腔を作成した. 鉗子, 超音波メス, 電気メスを用い憩室切除後, 膀胱壁を閉鎖するため5針縫合した. 術後20ヵ月の現在, 排尿障害, 尿路感染を認めず経過良好である. 腹腔鏡下膀胱憩室切除術は低侵襲に膀胱憩室の完全切除が可能であり症候性の膀胱憩室の1つの治療法に成り得ると考えられた.
  • 西岡 伯, 松本 成史, 紺屋 英児, 秋山 隆弘, 松浦 健, 栗田 孝, 尾上 篤志
    2001 年 92 巻 6 号 p. 640-644
    発行日: 2001/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    超音波造影を用いて移植腎の皮質微小循環の評価を試みた. 造影検査は超音波造影剤を経静脈的投与した後, 造影効果が発現している間に血流シグナルを同定し解析可能な波型を記録した. 14例の腎移植患者を対象に検査を行ったところ従来の超音波カラードップラー法では小葉間動脈レベルの血流まで評価できたのは2例 (14%) にすぎなかったが, 造影法では全例で同領域の血流が鮮明に描出され, 波型解析も可能であった. 小葉間動脈の波型解析によって得られた最大血流速と最小血流速の平均値は0.15m/secと0.04m/secであった. 超音波造影剤の応用によって移植腎のより末梢の血流動態が検出しえることが判明した. このことによって従来よりもさらに精度の高い移植腎の病態評価が期待される.
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