2002 年 93 巻 5 号 p. 633-637
近年我が国でも生活様式の欧米化と共に, 肺塞栓症は増えつつあり, 特に術後の発生が顕著となってきている. 我々は1995年以降の約3年半の間に4例の肺塞栓症を経験した. 症例は男性3例, 女性1例で, 1例が腎尿管全摘術後に, 1例がTUR-P後に, 2例が腹部動脈造影後に発生していた. 3例は回復したが, TUR-P後に発生した1例はいまだ意識が戻らず, 人工呼吸器の管理下にある. 肺塞栓症の危険因子としては, 3例が60歳以上で1例に肥満を認めた. 2例に高血圧の既往があり, このうち1例は心房細動も伴っていた. 3例でトラネキサム酸が投与されており, 投与する場合には慎重な配慮が必要と思われる. 肺塞栓の発生の予防には危険因子を把握し, 危険因子が高いと思われる患者には下肢の圧迫装置の装着や, 低容量のヘパリンの使用などの予防的措置をこうじることが必要と思われる.