日本泌尿器科学会雑誌
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完全重複腎盂尿管に伴う片側性尿管瘤に対する初回治療としての尿管瘤減圧手術の臨床的意義
寺西 淳一佐藤 裕之森 義明浅沼 宏宍戸 清一郎
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2006 年 97 巻 3 号 p. 561-567

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抄録

(目的) 完全重複腎盂尿管に伴う片側性尿管瘤に対する尿管瘤減圧手術の長期成績から初回治療としての意義を明確にすること.
(方法と対象) 当院において1987年より2000年までに本疾患に対し初回手術として内視鏡的瘤壁切開術 (TUI) または瘤所属上半腎手術 (UMO) のいずれかの尿管瘤減圧手術施行した33例を対象とし, 年齢等の対象背景に加え追加手術の有無, TUI例では膀胱尿管逆流症 (VUR) の術後新規出現について検討した.
(結果) 手術施行年齢と観察期間の中央値はそれぞれ6ヵ月 (1ヵ月~6歳6ヵ月) と82ヵ月 (27~153ヵ月) であった. 内視鏡的瘤壁切開術群22例中, 術後新規VURを14例 (63.6%) に追加手術を13例 (59.0%) に認め, いずれも膀胱内尿管瘤よりも異所性尿管瘤で高頻度であった. 追加手術のほとんどは術後新規VURの残存を理由に行われ, 上半腎無機能例に対しては追加手術として全例上半腎切除術が行われた. 一方, 瘤所属上半腎手術群11例中, 追加手術を3例 (27.3%) に認めた. 追加手術は全て術前から存在する対側や同側非瘤所属尿管のVURの残存を理由に行われた.
(結論) TUIは膀胱内尿管瘤に対して初回手術として最も有用であり, 異所性尿管瘤に対しても上半腎機能欠損がなければ根治手術時に瘤所属上半腎手術を回避できるので瘤所属上半腎手術より有用である. しかし, 上半腎機能欠損をともなう異所性尿管瘤に対しては, 初回手術として根治性を考慮して上半腎切除が有用である.

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