2007 年 98 巻 1 号 p. 37-40
症例は70歳, 男性. 肉眼的血尿, 両側水腎症を主訴に受診した. 膀胱鏡では, 膀胱頚部に非乳頭状, 広基性の腫瘍らしき組織が観察できた. CTでは両側水腎で, 原因は下部尿管の狭窄によるものと思われた. 膀胱と前立腺の境界部に, 縦にのびる腫瘤状の組織がみられた. 膀胱, 直腸周囲には多量の脂肪が沈着し, 膀胱は逆涙滴状に変形して腹側に偏位しており, 骨盤脂肪腫症の所見であった. 尿道膀胱造影では前立腺部尿道は延長し, 膀胱は腹側に偏位していた. 腰椎麻酔下に経尿道的腫瘤切除術を施行したところ, 病理は増殖性膀胱炎の所見で悪性像は見られなかった. 経会陰的膀胱頚部腫瘤生検にても, 悪性所見はなかった. 現在, 柴苓湯, 塩酸セチリジンから抗生剤と消炎酵素剤に治療を変更して, 経過観察中である.