抄録
58歳, 男性. 肉眼的血尿を主訴に近医受診し, 尿細胞診 class Vを指摘され当院紹介. 腹部超音波, CT, MRIにて左水腎症, 巨大尿管を認め内部に腫瘤性病変も指摘された. 巨大尿管症の原因としての膀胱尿管逆流症や尿管膀胱移行部狭窄症の有無を調べるため排尿時膀胱尿道造影と逆行性腎盂造影を施行したが, 逆流は認めず, 5Fr尿管カテーテルもスムースに挿入できた. 左尿管尿細胞診はTCC, class Vにて左巨大尿管に発生した尿管癌の診断のもと左腎尿管全摘術を施行した. 病理診断はTCC, papillaryG2, pTaであった. 壮年期まで巨大尿管症を指摘されずに尿管癌が発生したまれなケースである. 文献的にも先天性疾患における尿停滞と癌発生との因果関係は報告されておらず今後の症例の積み重ねが必要であると思われる.