日本泌尿器科学会雑誌
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99 巻, 7 号
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  • 井上 幸恵, 小林 慎, 菅谷 公男
    2008 年 99 巻 7 号 p. 713-722
    発行日: 2008/11/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    (目的) 過活動膀胱 (OAB) によりもたらされている経済負担を推計する.
    (対象・方法) 国内外で報告されたOAB, 尿失禁の疫学, 経済負担に関する文献を基に, わが国のOAB関連費用を推計した. 分析対象は地域在住の40歳以上男女とし, OAB治療費用, 直接費用 (OAB併存疾患治療費, 尿失禁関連費), 間接費用 (労働損失費用) を推計対象項目とした. また現状の受診率22.7%が35%,50%に向上した場合のOAB関連費用の削減額を推計した.
    (結果) 40歳以上の日本人OAB有症者数は856万人, そのうち医療機関受診患者は198万人と推計された. OAB関連総費用は年間9,562億円発生しており, 治療の有無にかかわらず有症者一人あたり11.2万円と推計された. OAB関連費用の内訳は, OAB治療費1,809億円 (19%) (うち薬物治療費1,591億円), OAB併存疾患治療費620億円 (6%), 尿失禁関連費用287億円 (3%), 労働損失6,846億円 (72%) であり, 労働損失が最も大きな割合を占めていた. 受診率が35%,50%に向上したと仮定した場合の費用削減額は927億円, 2,058億円で, 新規受診患者一人あたり8.8万円と推計された.
    (結論) 本研究により, OABが大きな経済的損失を生じていることが明白となり, OAB有症者に対する適切な治療によりこれらの費用を十分に削減できることが推測された.
  • 花井 禎, 松本 成史, 清水 信貴, 植村 天受, 杉山 高秀
    2008 年 99 巻 7 号 p. 723-728
    発行日: 2008/11/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    (緒言) LUTSのなかで現在まであまり注目されていない項目のひとつに, 排尿後尿滴下 (PMD) がある. QOLに大きな影響を与える可能性があるが, IPSSの項目に含まれていないことなどが影響し, 程度や頻度, QOLとの関連など不明な点が多い. そこで, 独自で作成した問診表を用いて調査した.
    (対象と方法) 2006年6月~2007年3月に当科に来院した初診患者621名 (男性394名:女性227名) を対象とした. 独自で作成したIPSS+PMD/QOL質問表に初診時に自己記入してもらい, 回答を得た.
    (結果) PMDスコアは男性では1.2±1.7, 女性では0.6±12であり, 男性は女性に比べ有意に高かった. 男性では, 50代からPMDスコアは高くなり70代でピークとなっていた. 女性では, 20代以降では大きな差は無かった. 男性ではBPH患者, 女性では腹圧性尿失禁の患者でPMDスコアが高かった. 最もPMDスコアが高かった疾患はBPHであった. PMDスコアは, LUTS群は1.59±1.90, 非LUTS群は0.36±0.90であり有意にLUTS群で高かった. LUTS群の男性とBPH患者では, QOLスコァとPMDスコアに正の相関を認めた.
    (考察) 泌尿器科外来初診患者621例を対象にPMDの自覚症状について検討した. 今回の検討によりPMDは, 若年者や女性でもPMDを経験すること, PMDは, LUTS症例 (特にBPH患者) においてスコアが高くQOLを損ねている可能性があること, などが明らかとなった.
    今後, PMDのより詳細な病態の把握が必要と思われた.
  • 高柳 明夫, 小林 皇, 橋本 浩平, 加藤 隆一, 舛森 直哉, 伊藤 直樹, 塚本 泰司
    2008 年 99 巻 7 号 p. 729-732
    発行日: 2008/11/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    症例は32歳, 男性. 両側精巣萎縮と性欲減退を主訴に2006年2月9日に当科を初診した. 問診より1999年からのアナボリックステロイド (AAS) の濫用が判明した. 身体所見では両側精巣容積が13mlと萎縮していた. 内分泌的検査では黄体化ホルモン, 卵胞刺激ホルモン, 総テストステロンは低値であり, 遊離型テストステロン (Free T) は高値だった. また, 後日判明した sex hornomne binding globulin (SHBG) も低値であり, 算出された calculated Bioavailable testosterone (cBAT) も低値だった. 以上の所見からからAASの濫用による低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と診断した. AASの中止のみで経過観察を行ったが改善を認めなかったため, 5月18日より週1回のヒト絨毛性ゴナドトロピン (hCG) 3,000単位筋肉注射を開始した. その後6月22日に内分泌学的検査を施行したが自覚症状, 内分泌検査所見ともに改善は認めていない. AASの濫用により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症となることが知られており, 一部の患者ではAAS中止後も性腺機能低下症が改善しないことが報告されている. 本症例においてはhCG注射を早期に開始したことが早期に精巣機能を改善するかどうかについて今後の注意深い観察が必要である. また, 本症例の病状を把握する上では free T よりもcBATを用いることが有用だったと考えられた. AASには多くの重篤な副作用があり安易な使用は控えるべきである. またAASの副作用に関しての広い啓発により濫用を防ぐことが必要と考えられた.
  • 牛田 博, 益田 良賢, 小泉 修一, 岡田 裕作
    2008 年 99 巻 7 号 p. 733-736
    発行日: 2008/11/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    58歳, 男性. 肉眼的血尿を主訴に近医受診し, 尿細胞診 class Vを指摘され当院紹介. 腹部超音波, CT, MRIにて左水腎症, 巨大尿管を認め内部に腫瘤性病変も指摘された. 巨大尿管症の原因としての膀胱尿管逆流症や尿管膀胱移行部狭窄症の有無を調べるため排尿時膀胱尿道造影と逆行性腎盂造影を施行したが, 逆流は認めず, 5Fr尿管カテーテルもスムースに挿入できた. 左尿管尿細胞診はTCC, class Vにて左巨大尿管に発生した尿管癌の診断のもと左腎尿管全摘術を施行した. 病理診断はTCC, papillaryG2, pTaであった. 壮年期まで巨大尿管症を指摘されずに尿管癌が発生したまれなケースである. 文献的にも先天性疾患における尿停滞と癌発生との因果関係は報告されておらず今後の症例の積み重ねが必要であると思われる.
  • 化学療法効果判定における可能性について
    中山 貴之, 吉田 宗一郎, 藤井 靖久, 古賀 文隆, 斎藤 一隆, 増田 均, 小林 剛, 川上 理, 木原 和徳
    2008 年 99 巻 7 号 p. 737-741
    発行日: 2008/11/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 男性. T2N0M0 低分化型膀胱尿路上皮癌, Micropapillary variant に対し, 化学放射線療法を施行後, 経過観察中に傍大動脈リンパ節転移を認めた. 同部位は拡散強調画像 (DW-MRI) にて高信号を示し 18F-FDG PETにても同様に異常集積を認めた. また, 腫瘍マーカーはTPA 180U/l, CYFRA 14ng/mlと高値を示していた. GC療法4コースによりCT, MRI (T1-W, T2-W) にてリンパ節転移巣は縮小し, 腫瘍マーカーが正常化するのに伴い, 18F-FDG PETの異常集積像も消失した. 同様にDW-MRIの信号強度は低下し, 定量的指標である Apparent diffusion coeficient (ADC値) の上昇を認めた. DW-MRIの信号強度およびADC値の変化が, 従来の形態学的画像診断, 腫瘍マーカーおよび18F-FDG PETと同様の変化を示し, 治療効果判定に有用となる可能性が示唆された.
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