視覚の科学
Online ISSN : 2188-0522
Print ISSN : 0916-8273
ISSN-L : 0916-8273
学会印象記
第57回日本眼光学学会総会印象記
添田 浩生
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2021 年 42 巻 4 号 p. 111-112

詳細

第57回日本眼光学学会総会は,WEB配信(LIVE配信及びオンデマンド配信)で開催され,学会長は京都府立医科大学の稗田牧先生が務められました。

今回のテーマは,「屈折と視力を理解する」となっており,敷居の高いイメージのある眼光学に苦手意識をもっている方でも参加しやすかったのではないでしょうか。実際の内容としてもテーマ通り日常診療において重要な屈折と視力について理解を深めることのできるシンポジウムや教育セミナーなどが多かったです。

特別講演1では,京都府立医科大学の外園千恵先生が「角膜疾患の視機能を考える」として角膜疾患の視力低下の要因とその治療法,現在までの視機能改善への取り組みについて講演されました。日常診療で角膜疾患や角膜移植後の検査をすることが多いのですが,角膜疾患の所見と治療の関連について知識を深めることができるよい機会となりました。

LIVE配信会場

特別講演2では,川崎医科大学の長谷部聡先生が「近視進行予防に対する眼光学的アプローチ」として現在エビデンスのある近視進行予防について講演されました。眼鏡やコンタクトレンズと合わせて薬物療法について最新の情報も聞くことができ,知識のアップデートをすることができました。まだ日本では実施されていないものもあるため,今後実施できるようになることを期待したいです。

LIVE配信会場の機材

個人的に驚いたのは,シンポジウム4 屈折の進行評価の中で慶應義塾大学の鳥居秀成先生が「学童近視進行」について講演された内容の中の1つです。調節麻痺下と非調節麻痺下の屈折度数についての検討した文献について紹介しており,遠視側で差が大きく近視側で差が小さいこと,近視が強いほど小さく遠視が強いほど大きいという内容でした。臨床での屈折評価を正確におこなうには調節麻痺が必要ですが,近視では非調節麻痺下でもおおよそ有用なデータを得ることができると考えることができます。このような報告は今までに聞いたことがなかったので有意義な情報を得ることができました。

また,私事では一般演題として「近視と瞳孔間距離の相関について」の発表をさせていただきました。LIVE配信の会場で発表させていただいたのですが,立派な機材に囲まれた中での発表で少し緊張しました。発表後はたくさんのご質問をいただき,学童近視に対する関心の高さを感じることができました。ご意見いただいたことも参考に今後も検討を続けていきたいと思います。

今回の日本眼光学学会総会は,新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発令が開催の間近にあり,LIVE配信に変更されました。学会長並びに事務局の皆様におかれましては,変更に伴う大変なご苦労があったのではないかと思います。

次回,第58回日本眼光学学会総会は,2022年9月3日(土),4日(日)に旭川医科大学の石子智士先生が学会長を務められ開催されます。北海道旭川市での開催,個人的にもとても楽しみにしており,ぜひ演題を持ち込み参加したいと思います。そのためにも新型コロナウイルスの1日でも早い収束を心より願います。

 
© 2021 日本眼光学学会
feedback
Top