日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
原著
療養型病院入院高齢者における皮膚と栄養状態の関連:栄養スクリーニングのための工学的皮膚評価
焦 麗娟飯坂 真司須釜 淳子松尾 淳子福田 汐里大場 美穂峰松 健夫田端 恵子杉山 徹真田 弘美
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2010 年 14 巻 2 号 p. 239-246

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抄録

 高齢者に対する栄養スクリーニングは低栄養の早期発見に重要であるが、患者や施設の特性により、その実施可能性が問題となる。本研究は、簡便な指標として皮膚に着目し、工学的測定による皮膚状態と栄養状態との関連を検討した。療養型病院入院高齢者90名を対象に横断調査を行った。栄養状態はBody Mass Index(BMI)、血清アルブミン値によって評価した。皮膚状態は、評価者1名が、下腿2ヵ所を測定し、pH、角質水分量、経皮水分喪失量、皮膚色のL*a*b*表色系とIndividual Typology Angle(ITA°)、皮膚形状により評価した。その結果、黄色を示すb*は両測定部位ともBMIと有意な負の相関を示した(内側ρ=-0.28, p=0.008, 外側ρ=-0.30, p=0.004)。また、低栄養リスクの有無による群間の差を検討した結果、BMI 18.5未満の群は、BMI 18.5以上の群にくらべ、内側、外側の測定部位ともに有意にb*の値が高かった(内側p=0.006、外側p=0.004)。同様に、血清アルブミン値3.5g/dl以下の群では、3.6g/dl以上の群に比較し、有意にb*の値が高かった(内側p=0.016、外側p=0.006)。本結果より、栄養状態低下と皮膚色の黄色化の関係が新たに得られ、将来の栄養スクリーニングの一つとして、皮膚色評価が有用である可能性が示唆された。

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© 2010 一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会
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