日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
原著
尿失禁用アウター内の皮膚温・湿度と快適性の評価
玉井 奈緒貝谷 敏子竹原 君江大江 真琴長瀬 敬村山 陵子
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2012 年 16 巻 4 号 p. 345-352

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抄録

 尿失禁は高齢者の健康問題の1つである。尿失禁を有する高齢者は失禁用品を日常的に使用する。特に紙オムツと尿とりパッドの併用は臨床現場で多く、体圧の上昇や蒸れの問題が懸念されている。近年ネットパンツがアウターとして使用されるようになってきた。しかしネットパンツの有用性については十分明らかではないため、幅広い使用にいたっていない。われわれはネットパンツの有用性を明らかにするため、客観的な皮膚温湿度、ならびに主観的な快適性を紙オムツと比較することにより評価した。研究デザインはクロスオーバー試験であり、ネットパンツと紙オムツを交互に着用した。6名の健常人の仰臥位時の殿部皮膚温湿度を経時的に測定するとともに、快適性に関するVASの評価も行った。皮膚温湿度は基準値に対する相対値で比較し、ウィルコクソンの符号付順位和検定を用いて解析した。その結果、60分後の左腸骨部皮膚湿度の相対値は、紙オムツ群よりネットパンツ群で低い傾向にあった(P=0.063)。一方で尿とりパッドに覆われていた仙骨部と恥骨上部は皮膚温湿度ともに両群で差はなかった。VASの評価では、「フィット感のなさ」、「違和感」、「動きにくさ」の項目でネットパンツ群が有意に低値であり、快適に感じていた。本研究より失禁用品は尿とりパッドの選択が重要であり、さらにアウターとしてのネットパンツは主観的にも客観的にも快適であるため、患者のQOL向上に役立つ可能性が示唆された。

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© 2012 一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会
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