抄録
本研究では、大腸癌患者の永久的ストーマ保有体験における意味獲得プロセスを明らかにした。研究参加者は6名で、半構造的面接によりデータ収集した。分析は、グラウンデッド・セオリー・アプローチの戈木の分析手法を参考に行った。
結果、14 個カテゴリが抽出され、意味獲得プロセスは『意味の再生期』(以下再生期)から『意味の成熟期』(以下熟成期)と推移し、【ストーマのある生活の醸成】【悲しみ抱え込み】【生活水準維持に傾倒】という3 つのプロセスを認めた。【ストーマのある生活の醸成】プロセスは、再生期では≪癌再発の克服の傾倒≫のなかで同病者との深い悩みの語りを通して≪生活への希望の芽生え≫が生じ、〔ストーマのある身体を諦める〕思いを強めていた。その後≪生きるためのストーマ造設の意味の了解≫を行い、同病者の支援により≪人間的成長の自覚≫を体験していた。成熟期になると≪ストーマの身体への馴染み≫が生じ、≪自分らしいストーマのある生活の醸成≫に取り組んでいた。一方、【生活水準維持に傾倒】プロセスは、再生期では≪慎重なストーマ管理の継続≫において生活行動の回復に傾倒し、また【悲しみ抱え込み】プロセスは、再生期に留まり≪肛門を失った悲しみへの揺り戻し≫が持続しており、両プロセスとも意味探索は認められなかった。
以上から、〔ストーマのある身体を諦める〕ことへの対処の仕方に応じて、喪失体験の語りや喪失状況に見合う生活の回復を長期的に支援することの重要性が示唆された。