日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
原著
ドセタキセルの投与を受けた乳がん患者の下肢浮腫の臨床的特徴に関する後ろ向き観察研究
今方 裕子須釜 淳子大桑 麻由美萱原 正都宗本 将義坂倉 喜代美山森 ゆみ嶽 加奈子江戸 稚香子大江 真琴
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2022 年 26 巻 3 号 p. 269-277

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抄録
背景
 乳がんの患者の浮腫治療は、リンパ節郭清後に発生する上肢のリンパ浮腫に焦点が当てられており、ケアガイドラインも存在している。一方、ドセタキセル関連の浮腫は上肢のみならず下肢にも影響を及ぼすにもかかわらず、患者に十分な浮腫管理がなされていない。本研究の目的は、ドセタキセルによる乳がん患者の下肢浮腫の詳細な特徴について明らかにすることである。
方法
 対象者は5 年以内にドセタキセルの投与を受けた乳がん患者とし、心機能障害、肝機能障害、深部静脈血栓症がある患者は除外した。下肢浮腫の発生率、出現時期、持続期間、部位、危険因子について、アンケートと診療録により調査した。
結果
 対象43名中13 名(30.2%)に下肢浮腫が出現した。出現時期はドセタキセルの投与4回目が最も多かった(46.2%)。持続期間は数日から5ヵ月の範囲であった。出現部位は下腿前面と足背が12 名(92.3%)であった。浮腫発症の教育を受けた者は5 名(38.5%)のみであった。StageⅣの乳がんが下肢浮腫発症の危険因子であった。
結論
 Stage Ⅳの乳がんが、ドセタキセルによる下肢浮腫の出現に影響していることが明らかになった。特にStage Ⅳの乳がんの患者には、ドセタキセル投与開始時からマネージメントを開始する必要がある。マネージメント部位は下腿から足背であり、かつ1ヵ月以上のマネージメントの継続が必要であることが示唆された。
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