日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
26 巻, 3 号
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原著
  • 西本 由美, 新石 健二, 小町 茉亜莉, 太田 裕子, 中田 晴美, 湯野 智香子, 山作 三枝子, 西田 敏美, 桂 英之, 須釜 淳子
    原稿種別: 原著
    2022 年 26 巻 3 号 p. 241-247
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    ジャーナル フリー
     当院に入院する患者にはおむつを着用し、皮膚表在性真菌感染症(以下、真菌症)を発症する患者が散見される。しかしながら、入院患者における真菌症の発症に関する因子は明らかになっていない。今回、真菌症の発症に対するリスク因子について後ろ向きに調査した。2016 年1 月~ 2017 年12 月にA 病院に入院していた患者で、真菌症を発症した患者111 名と、対象患者として患者と同室もしくは隣室に入院していた患者303 名に対して、年齢、性別、診療科、糖尿病の有無、悪性腫瘍の有無、抗生剤使用の有無、失禁の有無、便の性状、おむつ使用の有無、および肺炎などの感染症の有無に関して後ろ向き調査を行い、真菌症のリスク因子を検討した。多変量解析では、おむつ使用あり(オッズ比:5.97、95%CI: 3.15-11.30、p<0.001)、下痢あり(オッズ比:8.51、95%CI: 2.8-25.02、p<0.001)、経管栄養あり(オッズ比:2.90、95%CI: 1.71-4.90、p<0.001)、抗生剤使用あり(オッズ比:5.35、95%CI: 2.86-10.02、p<0.001)、感染症あり(オッズ比:2.01、95%CI: 1.08-3.76、p<0.03)の5項目で有意差を認めた。
     入院患者でおむつ使用、下痢、経管栄養、抗生剤使用、感染症がある人は、真菌症のリスクが高いことが示唆された。
  • 宮田 照美, 貝谷 敏子
    原稿種別: 原著
    2022 年 26 巻 3 号 p. 248-260
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は、スキン- テア発生患者の創の特徴と発生および治療に伴うアウトカムの実態を明らかにすることである。
     スキン- テア発生から治癒、または退院までの前向き縦断調査を実施した。皮膚・排泄ケア認定看護師が在籍する25病院に入院中のスキン- テアを保有する患者を対象とした。調査項目はスキン- テアの発生状況、スキン- テア発生による患者の変化(疼痛・QOL)、アウトカム(治癒期間・医療コスト)である。
     対象患者96 名の平均年齢は81.3(11.9)歳、発生部位は上肢が83.1%であった。スキン- テア発生時のSTAR 分類は2b が49.0%で最も多かった。スキン- テア発生時の疼痛はNumeric Rating Scale で平均1.9(2.1)であった。これは、高齢者は感覚的表現が困難なため、疼痛の評価が低かった可能性が考えられる。Euro-QOL-5D-5L を用いて算出した効用値は、スキン- テア発生時の平均が.42(.23)で、ほかの創傷の効用値とほぼ同等であった。
     平均治癒期間は12.0(6.2)日、医療コストは平均3,052(3,240)円であった。創サイズの大きさに伴い医療コストが上昇した(p<.05)。創サイズの縮小率を算出した結果、STAR分類1bは2bと比較し縮小率が有意に高かった(p<.05)。皮弁を正常な位置に戻し、創を被覆できる1bは2bよりも皮弁の生着がよいと考えられる。
  • 鶴岡 かほり, 大江 真琴, 峰松 健夫, 冨田 早苗, 大橋 優美子, 下嶋 祐子, 秦 斉, 安部 正敏, 山内 敏正, 真田 弘美
    原稿種別: 原著
    2022 年 26 巻 3 号 p. 261-268
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    ジャーナル フリー
     胼胝は外力負荷に伴う局所的角質肥厚であり、糖尿病足潰瘍のリスク要因である。胼胝の炎症は、糖尿病潰瘍の前段階に起こるサインである。多くの研究が皮膚炎症のサインとして足底皮膚温度の上昇をモニタリングすることが糖尿病足潰瘍の予防に有用であると報告している。しかし胼胝部における皮膚温度の上昇が実際に炎症を示しているかを検証した研究はない。本研究の目的は、糖尿病患者を対象に足部胼胝の皮膚温度の上昇と炎症マーカーとの関係を検討することである。足部胼胝を有する糖尿病患者30 名を対象に横断研究を行った。胼胝の炎症はスキンブロッティングによる炎症マーカー(TNFα)の検出で同定し、サーモグラフィで観察した皮膚温度の上昇と胼胝の炎症との関係をフィッシャーの正確確率検定で分析した。TNFα陽性率と胼胝部の皮膚温度上昇は有意に関連していた(p =0.009)。サーモグラフィによって同定された皮膚温度上昇による胼胝の炎症の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率は0.67、0.83、0.73、0.79 であった。本知見はサーモグラフィ上の胼胝部の皮膚温度上昇は炎症を示すこと、サーモグラフィを用いて胼胝部位の皮膚温度の上昇をスクリーニングし、早期介入による糖尿病足潰瘍の予防に有効である可能性を示唆している。
  • 今方 裕子, 須釜 淳子, 大桑 麻由美, 萱原 正都, 宗本 将義, 坂倉 喜代美, 山森 ゆみ, 嶽 加奈子, 江戸 稚香子, 大江 真 ...
    原稿種別: 原著
    2022 年 26 巻 3 号 p. 269-277
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    ジャーナル フリー
    背景
     乳がんの患者の浮腫治療は、リンパ節郭清後に発生する上肢のリンパ浮腫に焦点が当てられており、ケアガイドラインも存在している。一方、ドセタキセル関連の浮腫は上肢のみならず下肢にも影響を及ぼすにもかかわらず、患者に十分な浮腫管理がなされていない。本研究の目的は、ドセタキセルによる乳がん患者の下肢浮腫の詳細な特徴について明らかにすることである。
    方法
     対象者は5 年以内にドセタキセルの投与を受けた乳がん患者とし、心機能障害、肝機能障害、深部静脈血栓症がある患者は除外した。下肢浮腫の発生率、出現時期、持続期間、部位、危険因子について、アンケートと診療録により調査した。
    結果
     対象43名中13 名(30.2%)に下肢浮腫が出現した。出現時期はドセタキセルの投与4回目が最も多かった(46.2%)。持続期間は数日から5ヵ月の範囲であった。出現部位は下腿前面と足背が12 名(92.3%)であった。浮腫発症の教育を受けた者は5 名(38.5%)のみであった。StageⅣの乳がんが下肢浮腫発症の危険因子であった。
    結論
     Stage Ⅳの乳がんが、ドセタキセルによる下肢浮腫の出現に影響していることが明らかになった。特にStage Ⅳの乳がんの患者には、ドセタキセル投与開始時からマネージメントを開始する必要がある。マネージメント部位は下腿から足背であり、かつ1ヵ月以上のマネージメントの継続が必要であることが示唆された。
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