抄録
目的:われわれはリアルタイム性と非侵襲性を兼ね備えた超音波検査法(エコー)を用いて側頭筋厚を評価する側頭部エコーを栄養評価・栄養モニタリング法として確立してきた。今回、重度褥瘡患者に対して側頭部エコーを用いた在宅栄養管理を行った症例を報告する。
方法:90歳女性。寝たきり状態であり、仙骨部に皮下脂肪層にまで到達する褥瘡(ブレーデンスケール9点、DESIGN-R® D4-E6s6I3G6N3p0(24点))があり、医師より栄養介入依頼を受けた。介入前6ヵ月で2kg(4.7%)の体重減少があり、介入時には身長144cm、体重40kg、BMI 19.3kg/m2と痩せ傾向を認め、側頭筋厚3.8mm、血清Alb 3.3g/dLであった。必要栄養量をエネルギー1369-1597kcal/日、蛋白質57-68g/日とし栄養管理計画を立案。介入時にはエネルギー1375kcal、蛋白質38gと栄養摂取不足を認めたため、高蛋白の濃厚流動食200kcal分を追加した。2週間後、さらなる側頭筋厚減少を認めたため、濃厚流動食400kcal分を追加。その後は側頭筋厚の増加を認め、介入12週間で体重42kg、BMI 20.3kg/m2、側頭筋厚4.3mm、血清Alb 3.5g/dLへ改善し、褥瘡治癒にいたった。
考察・結論:側頭部エコーは在宅において非侵襲的かつリアルタイムにエネルギー充足状況を判定でき、在宅での褥瘡患者の栄養管理に有用な可能性がある。