背景:失禁関連皮膚炎(IAD:incontinence-associated dermatitis)は、弛みや皺のある皮膚では亜鉛華軟膏を用いたケアに難渋することがある。びらんへの被膜を可能とするシアノアクリレート配合被膜剤(以下、被膜剤)による効果を検証する必要性がある。
目的:びらん以上のIADを有し、臀部の皮膚に弛みと皺がある高齢透析患者を対象に亜鉛華軟膏と被膜剤を用いたケアの効果を比較する。
方法:後ろ向きコホート研究とし、2017年12月~2020年3月に亜鉛華軟膏を用いた9名を軟膏群、2019年4月~2020年10月に被膜剤を用いた12名を被膜剤群とした。IAD-setの点数を7日ごとに49日間追跡し比較した。
結果:IAD-setは介入0日目で軟膏群11.0(9-18)、被膜剤群11.0(5-18)(
p=0.808)、7日目で軟膏群11.0(6-17)、被膜剤群6.0(0-16)(
p=0.031)、14日目で軟膏群10.5(6-19)、被膜剤群5.0(0-14)(
p=0.034)と被膜剤群が有意に低かった。未治癒率の推移より被膜剤群の治癒効果が高かった(
p=0.004)。
考察:未治癒率の推移から被膜剤群の治癒効果が高く、軟膏群では弛みや皺のある皮膚の保護が困難であったのに対し、被膜剤は排泄物からの保護を可能にしたと考える。
結論:びらん以上のIADケアにおいて被膜剤の有効性が示唆された。
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