日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
Online ISSN : 1884-2321
Print ISSN : 1884-233X
26 巻, 4 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
原著
  • 藤井 渚, 市川 佳映
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 4 号 p. 316-324
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/26
    ジャーナル フリー
     背景:失禁関連皮膚炎(IAD:incontinence-associated dermatitis)は、弛みや皺のある皮膚では亜鉛華軟膏を用いたケアに難渋することがある。びらんへの被膜を可能とするシアノアクリレート配合被膜剤(以下、被膜剤)による効果を検証する必要性がある。
     目的:びらん以上のIADを有し、臀部の皮膚に弛みと皺がある高齢透析患者を対象に亜鉛華軟膏と被膜剤を用いたケアの効果を比較する。
     方法:後ろ向きコホート研究とし、2017年12月~2020年3月に亜鉛華軟膏を用いた9名を軟膏群、2019年4月~2020年10月に被膜剤を用いた12名を被膜剤群とした。IAD-setの点数を7日ごとに49日間追跡し比較した。
     結果:IAD-setは介入0日目で軟膏群11.0(9-18)、被膜剤群11.0(5-18)(p=0.808)、7日目で軟膏群11.0(6-17)、被膜剤群6.0(0-16)(p=0.031)、14日目で軟膏群10.5(6-19)、被膜剤群5.0(0-14)(p=0.034)と被膜剤群が有意に低かった。未治癒率の推移より被膜剤群の治癒効果が高かった(p=0.004)。
     考察:未治癒率の推移から被膜剤群の治癒効果が高く、軟膏群では弛みや皺のある皮膚の保護が困難であったのに対し、被膜剤は排泄物からの保護を可能にしたと考える。
     結論:びらん以上のIADケアにおいて被膜剤の有効性が示唆された。
  • 今方 裕子, 宮前 奈央, 須釜 淳子, 大江 真琴
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 4 号 p. 325-334
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/26
    ジャーナル フリー
    背景
     ドセタキセルは、乳がんの抗がん剤治療におけるキードラッグであり、副作用の1つとして浮腫が知られている。乳がん患者の浮腫治療は上肢のリンパ節郭清後に発生するリンパ浮腫に焦点があたっており、ドセタキセルによる浮腫とそのケアに関しては言及されてこなかった。乳がん患者に対するドセタキセル療法による浮腫ケアの確立を目指し、本研究の目的はドセタキセルを投与した乳がん患者の浮腫の臨床的特徴に関するエビデンスを要約することとした。
    方法
     本研究はスコーピングレビューデザインを用いた。検索対象は英語で発行された論文タイトルに限定した。すべての年齢およびすべてのステージの乳がん患者を対象とした論文を選定対象とした。2006年1月から2021年7月の間に発表された論文を対象とし、データベースは、PubMed、CINAHLおよびCochrane Centralを用いた。
    結果
     合計283件の論文がヒットし、最終的に8件の論文がレビュー対象に選定された。浮腫の出現部位はおもに上肢と下肢であった。ドセタキセルの投与終了後3週間で浮腫が出現し、化学療法後6ヵ月で手術の反対側の腕と、下肢の浮腫がドセタキセル投与前のレベルに戻っていた。
    結論
     乳がん患者の上肢の浮腫の要因は、リンパ節郭清とドセタキセルが混在している。したがって、ドセタキセルによる浮腫のマネージメントを確立するためには、リンパ節郭清の影響を受けない下肢浮腫の特徴を明らかにする必要がある。
  • スプリアディ シャフィイ シャド, スリアディ , 大桑 麻由美, 真田 弘美, 須釜 淳子, 大江 真琴
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 4 号 p. 335-346
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/26
    ジャーナル フリー
     糖尿病足潰瘍の治療中断は治癒遅延の原因となる。しかしながら糖尿病足潰瘍患者の創傷クリニック通院中断の要因は明らかになっていない。したがって、治療中断を予防する方策は不明である。この前向き研究は、治癒するまで治療を継続した場合の治癒に要する時間、費用、生活の質を調査し、通院中断の要因を明らかにすることを目的とした。糖尿病足潰瘍患者73名を対象とし、治癒した患者は15名、創傷クリニックの通院を中断した患者は58名であった。10日間の累積通院中断率は51%であった。平均治癒日数およびコストはそれぞれ31.5±21.0日、$150.20±118.84であった。効用値および健康状態の自覚のビジュアルアナログスケールは、それぞれ、ベースライン時0.55±0.20、69.67±11.87、治癒時0.91±0.16、93.00±5.92であった。通院中断の要因は低い月収(ハザード比1.87、95%信頼区間(CI):1.02 - 3.43、p = 0.044)とヘルスサービスへのアクセスのより低い満足(ハザード比:5.06、95% CI:2.34 - 10.97、p < 0.001)であった。糖尿病足潰瘍の治療費用の少なくとも69.7%を補助するための保険システムの導入が必要であり、通院継続が支援されたもとでの糖尿病足潰瘍の治療により患者の生活の質は改善するであろう。
短報
症例報告
報告
査読者一覧
feedback
Top