抄録
目的:注射薬の血管外漏出は多様な皮膚傷害を惹起し、患者のQuality of Lifeを低下させる。本研究は、血管外漏出が発生した症例の特徴を明らかにすることを目的とした。
方法:日本の1大学病院において2018年から2023年に入院し点滴治療を受けた診断群分類別包括支払い制度対象患者のうち、電子カルテシステムにて注射薬の血管外漏出が報告された患者を対象とした。血管外漏出が生じた症例の特徴を、患者背景、薬剤、手技の3つの観点から記述的に分析した。
結果:830名の患者において、同一患者での複数回の発生報告を含む1,045例の血管外漏出が報告された。血管外漏出の発生が報告された患者背景に着目すると、年齢層は70歳台(32.34%)が最も多く、ついで60歳台(18.12%)、80歳台(17.55%)であった。漏出した薬剤で最も報告が多かったのは、アミノ酸・水溶性ビタミン加総合電解質液(26.51%)であった。61.44%の患者で輸液ポンプが使用されていた。
結論:本研究において、血管外漏出が発生した症例の特徴は、加齢、末梢静脈栄養輸液の使用、輸液ポンプの使用であった。今後は、各要因と血管外漏出との因果関係の検証が必要である。