2004 年 8 巻 2 号 p. 29-35
高齢者の医療用粘着テープ(以下、テープ)貼付による皮膚障害の実態把握を目的として研究を行った。対象は500床の療養型医療施設に入院し、テープを貼付中で研究参加の同意が得られた65歳以上の患者56名である。方法は、皮膚障害の有症率と皮膚局所状態を調査し、高齢者のテープ貼付による皮膚障害の特徴を抽出した。その結果、皮膚障害の有症率は33.9%であった。皮膚障害は貼付目的別では、褥瘡保護、胃瘻部、擦過傷保護に多く、貼付部位別では腹部、臀部、下腿部に多かった。皮膚障害の種類は接触皮膚炎が77.3%と最も多く、次いで外傷、感染であった。皮膚障害の有無で対象の背景、テープの種類、貼付目的、貼付部位、清潔状況、皮膚の生理的所見を比較したが、どの項目においても有意な差はなかった。以上より、テープ貼付による療養型医療施設の高齢者の皮膚障害は高率で発生し、接触皮膚炎の所見でかつ褥瘡保護部と胃瘻部、擦過傷保護部に多いことが特徴である。