日本プロテオーム学会誌
Online ISSN : 2432-2776
ISSN-L : 2432-2776
総説
タンパク質の翻訳後修飾異常と疾患
戸田 年総
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2017 年 2 巻 1 号 p. 17-25

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抄録

タンパク質の機能は,基本的にはゲノム塩基配列によってコードされたアミノ酸配列に基づいているが,多くのタンパク質では翻訳時および翻訳後の修飾によって本来の生理機能や局在性などが細かく調節される.例えばリン酸化は酵素などの活性を調節したり,他の生体分子との相互作用を調節したりすることによってシグナル伝達などで重要な役割を果たしている.またユビキチン化は分解を調節するほか,他のタンパク質との相互作用を介してDNA修復などにも関わっている.そのため,これらの修飾が正常に行なわれないと,結果的に疾患病態を引き起こす場合もある.実際多くのがん細胞では,シグナル伝達に関わるタンパク質のリン酸化が亢進しており,これががん細胞の増殖性や転移性に影響を及ぼしていると考えられている.近年網羅的タンパク質分析技術として目覚ましい発展を遂げたプロテオミクスは,疾患に伴う翻訳後修飾の変化を網羅的かつ高感度に検出する技法としても極めて有効であり,今後多くの成果が得られるものと期待される.そこで本稿では,翻訳後修飾異常と疾患の関係に関する最新の知見の中から主なものを取り上げて概説する.

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© 2017 日本プロテオーム学会
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