日本プロテオーム学会誌
Online ISSN : 2432-2776
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総説
腎糸球体プロテオーム解析からみえてきたもの:あるプロテオミクス研究者の挑戦と挫折
吉田 豊
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2017 年 2 巻 1 号 p. 27-35

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抄録

腎疾患のバイオマーカーと治療ターゲット分子の発見を目的として,質量分析計を用いたタンパク質解析が熱く語られ始めた頃からおよそ15年にわたり主に腎糸球体のプロテオーム解析に関わってきた.この間研究することの喜びとともに多くの挫折も味わってきた.本論では,我々のこれまでの研究成果について概説するが,その前にこれまで糸球体プロテオーム解析に携わってきた経験から,プロテオミクスについていくつか意見あるいは感想を述べる.最初にプロテオーム解析の限界と課題について私見を紹介する.プロテオーム解析の課題として依然として解決されていない同定のあいまいさと,対象としてのプロテオームの絶望的な複雑さが中心的な話題になる.つづいてプロテオーム解析の目的について述べ,これに関連することとして,これまでプロテオーム研究が歩んできた道と現在の状況について整理することを試みる.次に我々の糸球体プロテオームの研究の歴史と,最新の結果も交えて,これまで得られたささやかな成果について概説する.研究の当初抱いていた夢とは少しばかりずれてしまったが,質量分析を楽しんだことは間違いない.最後に,プロテオーム研究の今後の展望について私見を述べる.

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© 2017 日本プロテオーム学会
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