2018 年 3 巻 2 号 p. 31-36
製薬会社から報告されたプロテオミクス応用に関する最近の論文を中心に,製薬企業におけるプロテオーム研究動向を考察した.プロテオミクスの創薬応用は,2000年代初期の困難な時期を乗り越え,薬物代謝,安全性,臨床開発,製造など,製薬会社の様々な部門に広がった.タンパク質発現プロファイリング,薬剤の結合タンパク質を同定するケミカルプロテオミクス,SRM/MRM等を用いた個別タンパク質定量,キナーゼ阻害剤関連研究を中心としたリン酸化プロテオミクスなどの翻訳後修飾解析,タンパク質間相互作用解析など,創薬研究における様々な課題解決にプロテオミクスは不可欠となっている.翻訳後修飾解析や高深度プロテオーム解析など,プロテオミクス技術の今後の一層の進展が,創薬研究をさらに加速することが期待される.