日本プロテオーム学会誌
Online ISSN : 2432-2776
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総合論文
融合プロテオミクスによるがん幹細胞の治療標的の解析
荒木 令江
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2024 年 9 巻 2 号 p. 47-63

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抄録

近年,がん幹細胞の存在が示され,がんの化学療法耐性や再発に関わる根源として注目されている.がん幹細胞とその微小環境(ニッチ)を標的にする事によって画期的な治療法の開発が大きく期待されているが,開発に必要不可欠な実験モデル細胞の取得が容易でないことや,特異的がん幹細胞マーカーのみならず,ゲノムやプロテオーム情報などが断片的であることなどから,がん幹細胞の機能分子情報は非常に乏しく,治療標的の開発は困難を極めている.我々は,独自に各種の患者がん組織細胞からがん幹細胞の樹立と分化誘導モデルの作製に成功し,これらのプロテオームとmRNA情報を融合した発現比較解析から詳細ながん幹細胞の分子情報を得ることを試みている.本稿では,主に悪性glioma幹細胞を解析モデルにして,これらの定量的分子情報から,glioma幹細胞の維持と分化誘導のスイッチングに関わる分子ネットワークダイナミックスの全体像を把握するための方法論を紹介する.さらに,これらから抽出した興味深いがん幹細胞-がん細胞の相互誘導の鍵因子,および治療標的候補となる特異的シグナルを抽出した例を紹介し,がん幹細胞の翻訳後修飾を含むプロテオミクスが如何にがんの根治につながる標的分子群同定に有用であるかを解説する.

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© 2024 日本プロテオーム学会
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