人口学研究
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論文
労働力人口の将来変化と高齢化社会の扶養負担
辻 明子
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1999 年 24 巻 p. 1-13

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抄録
人口高齢化は日本を含め先進諸国において共通の構造的特徴であり,またこの現象によって様々な問題が生じている。その一つとして,人口構造の変化に伴う扶養負担の増大をあげることができよう。そこで本研究ではこの扶養負担の変化について,労働力従属人口指数を用いた時系列的な分析を行った。将来にかけての労働力従属人口指数をみるために,2025年までの男女・年齢別将来労働力率を推計し,これをもとに将来労働力人口を導きだした。この将来労働力人口から将来の労働力従属人口指数を算出した。また,将来労働力率として,本研究で行った推計以外の既存の将来労働力率も用い,比較・検討を加えた。労働力従属人口指数によって扶養負担をみるならば,今後人口高齢化が更に進行した場合でも,扶養負担水準は過去にすでに経験した程度もしくはそれ以下であると予測される。1997年現在の扶養負担水準(86.0)は1955年以降最も低いものである。今後その値は上昇するものの2025年における水準103.5は,1970年前後のそれと同程度であり,1955年の112.0には及ばない。労働力従属人口指数の将来の水準は,将来の労働力率,ひいては「労働」にまつわる種々の問題と密接な関係にあることは明らかである。労働力従属人口指数からみる扶養負担とそこから導き出される種々の課題の前には,いわばこれから我々がどのような働き方をするのか,どのような働き方をする社会を構築していきたいのか,という本質的な問題が横たわっていることはまちがいあるまい。
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© 1999 日本人口学会
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