人口学研究
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論文
潜在的他出者仮説の再検討 : 地域的差異とコーホート間差異に着目して
丸山 洋平大江 守之
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2008 年 42 巻 p. 1-19

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抄録

戦後日本では非大都市圏から大都市圏へ膨大な人口が移動し,1960年代の高度経済成長期には転入超過が毎年おおむね40万人以上にのぼった。しかし,1970年代に入って急速に転入超過が縮小する人口移動転換を経験する。この現象を説明する仮説に,伊藤(1984)の提唱した潜在的他出者仮説がある。この仮説は人口転換によるきょうだい数の減少が人口移動転換を引き起こすことを指摘している点で,我が国の人口研究において重要な仮説となっているが,これまで,その有効性や限界に関して十分に検討されてはこなかった。本研究は,地域的差異とコーホート間差異に着目して同仮説を発展的に再検討するものである。1950年代前半から1960年代後半の4コーホートを対象に,残留人口規模を示す後継者理論値を作成し,それとコーホート人口との比である後継者充足率によって潜在的他出者を超えた人口流出がいつ,どこで,どの程度の規模で起きているかを明らかにする。分析の結果,潜在的他出者仮説が十分な説明力を持つのは1950年代前半コーホートのみであり,1950年代後半以降の3コーホートでは説明力が弱まっていること,非大都市圏内にも後継者充足率の地域的差異があることが明らかとなった。また,親の移動と死亡を考慮した結果,非大都市圏の後継者理論値の減少が確認され,親世代が大都市圏郊外部および周辺部に転出していることが示された。

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© 2008 日本人口学会
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