人口学研究
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論文
女性事務職の賃金と就業行動 : 男女雇用機会均等法施行後の三時点比較
寺村 絵里子
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2012 年 48 巻 p. 6-22

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抄録

本研究は,政府統計のリサンプリング・データを用いて,日本の女性労働者の最大多数の職種である女性事務職の賃金と就業行動の3時点(1992年,1997年,2002年)の変化を検証したものである。分析の結果,女性事務職はかつての米国同様に結婚(又は出産)退職まで働く若年層の仕事から中高年層の仕事へと広がりをみせていた。さらに賃金関数を推計すると,女性事務職については1997年時点から徐々に賃金は低下傾向にあった。また,事務職の中でも,中高年まで賃金を維持し続けることができるのは会計事務の仕事であり,正社員として会計事務で働くことはさらに正の効果をもたらしていた。事務職として勤めていた者の再就職についてみると,高学歴層である大卒・院卒者は三時点を通じてむしろ離職確率を高めていた。1992-2002年の間に限定すると,高い人的資本を持つ者が就業継続する(できる)ようになったとはいえない。高学歴化する女性事務職の活用について,さらなる検討が使用者である企業側にも求められる。

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© 2012 日本人口学会
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