人口学研究
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両大戦間期におけるわが国の結婚出生力
村越 一哲
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ジャーナル フリー 早期公開

論文ID: 2202001

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抄録

本稿では,両大戦間期のわが国を対象として,結婚継続期間が出生期間をカバーするようコントロールされた,「初婚婦人」の平均出生児数を,地域分類別,職業分類別に求めた。求めた平均出生児数とその変化についてはつぎのようにまとめられる。

全国的にみたとき,出産中心年が「1921-1925年」における「初婚婦人」の平均出生児数は5.87人であったが,「1936-1940年」には5.61人へと0.26ポイント低下した。また職業分類別にみると,夫が第1次産業従事者に分類される「初婚婦人」の平均出生児数は「1921-1925年」の6.62人から「1936-1940年」の7.09人へ0.47ポイント上昇した一方,夫が非第1次産業従事者に分類される「初婚婦人」の平均出生児数は5.39人から4.96人へ0.43ポイント低下した。全国の平均出生児数は,職業分類別平均出生児数の加重平均なので,全国平均が低下したのは,夫が非第1次産業就業者に分類される「初婚婦人」の平均が低下する一方,夫が第1次産業就業者に分類される「初婚婦人」の平均が上昇した結果と解釈できる。

本稿で求めた平均出生児数を結婚出生力の指標である完結出生児数とみなすとき,昭和戦前期にわが国の結婚出生力は低下したといえるが,低下幅は大きくなかった。それは,非第1次産業従事者夫婦の結婚出生力が低下する一方,第1次産業従事者夫婦の結婚出生力が上昇したからである。低下と上昇が差し引かれて,全国的に結婚出生力はゆるやかに低下したのである。

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