人口学研究
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マクロ統計データの組み合わせによる新たな地域人口分析指標
丸山 洋平
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論文ID: 2301005

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抄録

新たな分析指標が生み出される背景には,それを必要とする研究命題があり,その研究命題は新たな着眼点や問題意識を内包している。これらは切り離して考えられるものではなく,普遍的,一般的な状況を想定するというよりも,特定の課題解決や仮説検証,探索的検討のために新しい分析指標は生み出される。2000年代以降の日本の地域人口研究をめぐる展開としては,まず人口減少と少子高齢化が本格化しており,各地域の人口の特徴を把握する要請がある。それにe-Statを始めとしてマクロ統計データの入手が容易になったことが加わり,より強く認識されるようになった東京一極集中と地方圏からの若年人口の流出,大都市圏郊外地域の変容,出生率低下の背景にある家族形成行動の変化といった,時代に沿った新しい人口・家族問題を考えるための分析指標が創出されている。本稿では日本の地域人口研究における分析指標,および指標化には至っていなくても新しい分析視角を提供するものについて,2000年代以降の研究を中心に,その前身となる研究も含めて創出されたものをレビューした。レビューは1)人口移動の実体を捉える分析指標,2)人口移動の影響を考慮した地域間比較の視点,3)詳細な世代間関係を考慮した分析指標,の大きく3つに分類している。

研究という行為には,それを行う研究者の持つ専門性や分析視角が反映されており,研究者毎の課題認識や着眼点に基づく研究命題がある。そうした命題に接近するために新しい分析指標を創出する行為には,数々の試行や研究的な営みがあり,その指標による分析から得られる知見のみならず,指標の創出過程にも大きな学術的意義がある。

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© 2023 日本人口学会
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