抄録
2023年9月11〜24日まで北海道札幌市で、Adventure Travel World Summit(ATWS)が開催された。筆者は日本のアドベンチャーツーリズム(AT)黎明期の2018〜2020年に日本政府観光局(JNTO)に勤務し、アジア初のATWS 北海道大会開催誘致及びAT プロモーションを担当した経緯から、運営支援ボランティアを兼ねて参加した。大会開催決定を契機に観光施策や訪日プロモーションの軸の1 つとしてAT の取組が急速に広がったが、一方で日本国内におけるATに関する学術研究は観光経営を含め殆どない。ATが重視する持続可能性は一般に環境・社会・経済の3要素で捉えられ、国連総会で2015年に採択された国際目標である持続可能な開発目標のケーキモデル(Rockström & Sukhdev, 2016)に見るように、環境関連目標は土台として理解されるが、取組を後押しする経済的なインセンティブは不可欠である。
本稿ではAT 周辺状況の変化及びATWS2023 のセッションや参加者意見を踏まえ、3 要素の均衡がとれた持続可能な観光の実現に向けて、ポストATWS2023への期待と課題を速報する。