抄録
「目的」本研究の目的は,変形性股関節症に罹患して人工股関節置換術を受けた患者の在院日数に運動介入が及ぼす影響について検討することである。「方法」研究デザインはRCTに対するシステマティックレビューであった。関連する論文を文献データベースにて検索した。収集した論文から組み入れ基準に合致した論文の本文や図表から,術式,患者の個人属性,介入方法,結果の概要を抽出した。個々の研究のrisk of biasは,PEDroスケール(10 点満点)を用いて得点化した。「結果」検索の結果,48編の論文が抽出された。データベース間で重複して抽出された論文や,組み入れ基準に合致しない論文を除外したところ,最終的に7編の論文が採用された。採用した論文において対象者に実施されていた人工股関節の術式は,Total Hip Arthroplasty(以下THA)が5編,Thrust Plate Prosthesis(以下TPP)が2編であった。まず,THAにおいては,術前の運動介入を扱った論文が3編あったが,運動介入の有無で在院日数に有意な差はなかった。残りの2編は術後の運動介入を扱った論文であり,1編は早期荷重,もう1編は漸増抵抗運動の効果を検討しており,2編ともコントロールよりも在院日数が有意に短かった。次に,TPP においては,術前の運動介入を扱った論文1編が採用されており,術前に運動介入を実施しても在院日数は有意に短縮していなかった。術後の運動介入を扱った論文1編では,早期に荷重時期した群の在院日数がコントロール群よりも有意に短縮していた。特定の運動介入による在院日数の短縮を示したRCTのPEDroスケールは,THAの2編がそれぞれ2点と6点であり,TPPの1編が5点であった。「結論」THAやTPP後患者の在院日数を短縮させるには,術後の運動介入が効果的であり,特に漸増抵抗運動や早期荷重運動といった運動介入が推奨される。ただし,在院日数の短縮を示したRCTの数は多くなく,PEDroスケールの得点が高いRCT(6点以上)は1編のみであった。高いエビデンスによって支持されるためには,バイアスのリスクが少ない複数のRCT によって検証される必要がある。