理学療法の臨床と研究
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原著
身体固定の有無が大腿四頭筋セッティングの筋力と下肢筋活動におよぼす影響
篠原 博浦辺 幸夫前田 慶明笹代 純平藤井 絵里森山 信彰事柴 壮武
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2014 年 23 巻 p. 3-6

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抄録

大腿四頭筋セッティング(Quadriceps femoris muscle setting:QS)は,臨床場面で頻繁に実施されるエクササイズである。臨床ではQS時に上肢にて治療用ベッドを把持し,身体を固定すると下肢筋力が発揮しやすくなるという意見を聞く。しかし,上肢による身体固定の有無が筋力発揮にどのように影響するかは報告されていない。本研究では上肢にて身体を固定した場合と固定していない場合を比較し,固定した方がQS時の筋力と下肢の筋活動が高くなるか検証することを目的とした。対象は下肢に既往がない成人男性7名とした。対象は治療用ベッドに長座位姿勢をとり,膝窩に簡易筋力測定装置を設置し,膝関節25度屈曲位,股関節115度屈曲位の状態を基本姿勢としQS時の筋力(セッティング力)を計測した。その姿勢から上肢を胸の前で組んだ状態(支持なし),治療台を軽く把持した状態(上肢接触),治療用ベッドを強く把持した状態(上肢把持)の3条件でQSを実施した。筋活動の分析は大殿筋,内側広筋,半膜様筋の3筋を対象とした。QS時の安定した1秒間の積分値を最大収縮時の値で正規化した値を%MVCとして分析に使用した。セッティング力は支持なし13.4±2.3N,上肢接触16.5±3.5N,上肢把持41.7±6.3Nとなり,上肢把持が他の条件よりも有意に高値を示した(p<0.01)。筋活動は全ての筋において上肢把持が他の条件よりも有意に高値を示した(大殿筋,内側広筋:p<0.01,半膜様筋:p<0.05)。本研究の結果から,長座位姿勢にてQSを行う際,上肢にて治療用ベッドを把持し身体を固定することで,筋力発揮や下肢筋活動が高まることが示された。上肢把持にて身体が固定されることでQSを行いやすくなり下肢筋活動が高まったのではないか。結果としてセッティング力が増加したと考える。本研究の結果から,臨床でQSを行う際,上肢にて体幹を固定することでより効果的に筋力増強ができる可能性が示唆された。

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© 2014 公益社団法人 広島県理学療法士会
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