抄録
脊椎椎体骨折は、脆弱性骨折の中でも最も発生が多く、理学療法士が臨床現場で遭遇する機会の多い疾患の1つである。しかしながら、脊椎椎体骨折後の理学療法やリハビリテーションに関連するエビデンスは乏しく、各療法士の経験などに基づいた介入が行われている場合が多い。先行研究によると、脊椎椎体骨折後の生活は、疼痛に対する恐怖や不安により、自信の喪失や活動制限に繋がり、骨折後の数年間は健康状態がほとんど改善されなかったと報告されている。また、脊椎椎体骨折には骨粗鬆症が背景に存在し、サルコペニアやフレイルなどの問題が共存している可能性が高いことも近年の研究で明らかにされている。これらの事実は、理学療法士が脊椎椎体骨折という“疾患”を診るのではなく、“1人の患者”を診るという意識を持つ必要性を強調している。本稿では、まず脊椎椎体骨折の基礎知識について解説し、脊椎椎体骨折後の理学療法・リハビリテーションを考える際に、理学療法士が確実に押さえておくべき2つのポイントを紹介する。