2022 年 2 巻 1 号 p. 1-10
福島県浜地域の営農再開地域の農地は,除染作業に伴い肥沃な表土が剥ぎ取られたことが大きな農作物の生産上の課題となっている。本研究では福島県双葉郡富岡町の水田圃場(32 筆,計835a)において営農再開時期の異なる複数の圃場においてトラクタ搭載型の土壌分析システムにより測定したハイパースペクトルデータから土壌全炭素量を推定し,土壌マップを作製した。その結果,対象圃場内の土壌全炭素量には大きな空間変異があることが明らかになった。また,営農再開後の年数が経過し稲作実施回数が増加するほど,土壌全炭素量が増加する傾向が見られた。特に,まだ営農再開をしていない圃場と,稲作を既に4 回以上実施した圃場の間では土壌全炭素量に有意差が認められた。本結果は,福島県浜地域の除染後農地の地力回復に重要な知見になると考えられる。今後,現地土壌を用いてハイパースペクトルデータから土壌全炭素量を推定する回帰モデルをキャリブレーションするとともに,同一圃場での経時的な調査が必要である。それによって,個々の栽培技術が土壌全炭素量に及ぼす影響を定量化し,福島県浜通り地域の除染後農地での農業復興への道筋を明確にできることが期待される。