復興農学会誌
Online ISSN : 2758-1160
原著論文
除染による土壌肥沃度低下とその回復に向けた取り組み(第1 報)
山木屋地区除染後農地における緑肥の分解と土壌微生物バイオマス炭素量への影響
八島 未和斎藤 葉瑠佳菊地 悠汰
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2022 年 2 巻 1 号 p. 11-23

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抄録

東京電力福島第一原子力発電所事故後放射性物質によって汚染された農耕地土壌では,主に表土剥離及び客土による除染に伴い,土壌肥沃度が低下した。本研究では,福島県伊達郡川俣町山木屋地区の農家圃場を対象とし,1. 客土と除染以前から存在していた下層土を比較し,肥沃度低下の実態を調査した。2. 2年間緑肥の栽培と鋤込みを行い,土壌理化学性および微生物バイオマス炭素と易分解性炭素量や可溶性全窒素量への影響を調査した。1. において,除染により土壌中の全炭素量や全窒素量,可給態窒素量,陽イオン交換容量の大幅な低下が認められた。肥沃度低下は畑地よりも水田で著しく,下層土のほうが客土よりも肥沃度が高かった。2. において,除染後農耕地において緑肥を栽培すると,ヘアリ―ベッチやソルガムに比べてライムギが旺盛に生育した。 試験地でのライムギとヘアリーベッチの分解率はそれぞれ66 %83 %9 か月間)であった。両緑肥とも当初投入した炭素の20 %程度が土壌に残存し,炭素貯留効果も期待された。4 作のライムギ鋤込みは易分解性炭素量および可溶性全窒素量を有意に増加,ヘアリーベッチ鋤込みは可溶性全窒素量および微生物バイオマス炭素量を有意に増加した。今後,当該地域の営農開始のため,長期的かつ安定的な土壌肥沃度回復が喫緊の課題であり,緑肥の使用は微生物性の乏しい客土の養分循環の回復に資すると考えられた。

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