復興農学会誌
Online ISSN : 2758-1160
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食農学類と復興農学会
生源寺 眞一
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2023 年 3 巻 1 号 p. 26-30

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抄録

私は,2023 3 月末日をもって福島大学食農学類の食農学類長としての役職が終了する。2019 4月に開設された食農学類の第1期生とともに,福島大学を卒業するわけである。今回は,私自身が多少なりとも関与した福島大学の取り組みについて,食農学類の特色を中心に紹介する。また,食農学類の基本理念が復興農学会の基本理念と重なり合う点も指摘したい。食農学類の教員構成の特色は,着任した教員の出身大学の立地を眺めると,北は北海道から南は鹿児島県までの広がりがあった。もう一つの特色は,食農学類の4つの専門コースのうち食品科学コースの教員が10 名で,全教員の4 分の1 を上回っていることである。食農学類の準備段階から教職員に繰り返し強調してきた点は,特色のある教育を目指そうということであった。そのうち,前期・後期を通じた農場基礎実習は,森林や食品産業や農業経営も素材に含めながら,意欲に満ちた新入生に動植物や食品に直接触れる機会を提供する。また,農学実践型教育は,2 年次後期から3 年次にかけて開講され,農林業や食品産業などの課題に向き合い,解決策の提案を模索するカリキュラムであり,県内7 つの市町村が参画している。現場との密接な交流を通じた学びの機会の提供は,少なからぬ農学系学部で実施されているが,1 年半にわたる必修科目である点は食農学類の特色と言ってよいであろう。ディプロマポリシーとして,食農学類は4つの理念を掲げている。すなわち実践性・学際性・国際性・貢献性の4 本柱である。実践性と学際性を重視する人材養成の理念は,特色のある教育カリキュラムにも反映されている。実践性の重視とは,農林業の現場の課題に向き合うことで,本来の農学の原点に立ち戻ることを意味している。貢献性については,「科学的なエビデンスと論理性を大切にする冷静な分析力を身に付けるとともに,長期の時間視野から地域貢献の意義を理解できること」と考えている。ディプロマポリシーの実践性・学際性・貢献性についてはふたつの意味がある。第1点は教育の方針として存在し,第2点は,研究を導く基本理念であるとの思いである。そして第2 点に関しては,現場に向き合って農学の研究に取り組む点で,食農学類と復興農学会の姿勢には共通する面が多い。この点に追加的な説明は不要と思う。今回は取り組みの理念を中心に,復興農学会との結びつきも念頭に置きながら,開設からまもなく4 年となる歩みを紹介させていただいた。

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