2011 年に発生した東京電力福島第一原発事故以降,同一圃場内での土壌放射性 Cs 濃度の水平分 布についての報告はほとんどない。我々は 2012 年にダイズ(Glycine max)とアズキ(Vigna angularis)の 栽培試験を福島県内の阿武隈中山間地で実施した。その際,現地畑圃場内に 27 区画(各 2.5×3 m)設けて それぞれの土壌137Cs 濃度を深度別に測定したので,本報ではそれらの値のばらつきを中心に報告する。本 圃場の土壌理化学性には標高の高低に沿って若干の違いが見られた。0~10 cm 層の土壌 137Cs 濃度は平均 0.97 kBq kg−1-乾土で,ばらつきを変動係数(CV 値)で表すと 17.5%となった。10~20 cm 層の平均値は 0.38 kBq kg−1-乾土と上層よりも有意に小さかったが、CV 値=51.7%とばらつきはより大きかった。土壌 137Cs 濃度と土壌 pH(H2O)や陽イオン交換容量,交換性カリ含量(Ex-K)との間に相関関係はなかった。現 地圃場では 2012 年 6 月の試験開始までに計 2 回(推定)のロータリー耕を行っているが,今回の結果は福 島第一原発事故直後に土壌表層に沈着した放射性Cs が水平方向や深さ方向へ均一に再分配されるには不十 分だったことを示している。