1995 年 41 巻 5 号 p. j45-j53
哺乳動物を対象にした実験発生学で実験動物の多様化をはかるために,スンクス,Suncusu murinus,(食虫目,トガリネズミ科)の全胚培養系の確立を目指した.スンクス胚の培養は,すでに技術の確立しているマウス・ラットの培養条件とはかなり異なる.それはスンクスがこれらの動物とは違った発生様式をとることに起因している.スンクスの場合,尾方に脱落膜を残し,吻方では羊膜を露出して培養するので,保持が容易なうえ,実験操作をするときの胚の正確な位置決めも容易である.スンクスの全胚培養系を応用して,神経管最吻端での神経ヒダ癒合過程における細胞の動態を明らかにすべく,標識細胞追跡実験を行った.その結果,神経管最吻端にみられる神経管管腔内のマクロファージ様細胞やその他の細胞(片)は,神経上皮に由来していることが明らかとなった.