Journal of Reproduction and Development
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1995年度家畜繁殖学会シンポジウム-生殖行動の比較生物学-
キンギョの性行動とその性的可塑性
小林 牧人
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1995 年 41 巻 6 号 p. j135-j142

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抄録

多くの魚類では,産卵期になると雌が卵を産み,雄が産み出された卵に精子をかける産卵行動(性行動)がみられる.キンギョでは,雌の性行動(放卵)は卵巣でつくられるプロスタグランジン(PG)の作用により誘起されるが,この時,卵巣で産生される性ホルモンは必須ではない.一方雄の性行動(追尾,放精)は,雌から水中に放出されるフェロモンの作用により誘起されるが,この場合,精巣で産生される雄性ホルモンの存在が必要であると考えられる.非性転換魚であるキンギョでは,通常この雌雄の性行動が逆転して起こることはないが,雌に雄性ホルモンを投与することにより,フェロモンに反応して雄の性行動が誘起され,雄にPGを投与すると雌の性行動が誘起される.またホルモン投与後,本来の性の性行動をする能力は失われない.これらの結果は,キンギョの脳は性的に両性であることを示唆する.魚類には性転換を行なう魚種が多く存在するが,これらの魚はその生活史において雌雄両方の性行動を行い,その脳は両性性をもつと考えられる.性転換魚類の存在とキンギョでの実験結果をあわせて考えると,魚類の脳の両性性は,性転換魚類に特異な性質ではなく,魚類全般にみられる性質であると考えることができる.

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© 1995 Society for Reproduction and Development

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