抄録
Wistar系ラットを用いて,偽妊娠期間に及ぼす脱落膜腫の影響をしらべた。
偽妊娠は精管結紮雄ラツトと交尾させて誘起し,交尾後腔垢が最初に発情休止期像を示した日を偽妊娠の第1日,連続休止期像最後の日を偽妊娠の最終日とした。
偽妊娠の第4日に両子宮角を創傷し,子宮全体に脱落膜腫を形成したラツトの偽妊娠期間は平均18.3日で,偽手術ラツトの12.9日より有意に長かった。一方,一側子宮角のみに脱落膜腫を形成したラツトの偽妊娠期間は13.5日で,偽手術ラツトのそれとの間に有意差がみられなかった。
一側子宮角創傷および偽手術ラットの偽妊娠第13日における黄体には一部に退行性外観が観察されたが,両子宮角創傷ラットではこのような白色化黄体はみられなかった。さらに,一側子宮角創傷ラツトの偽妊娠第13日における創傷子宮角の重量は両子宮角創傷ラツトのそれより有意に小さかった。
これらの観察結果は両子宮角に脱落膜腫を形成させることにより偽妊娠黄体の命数が延長するが,一側子宮角が正常である場合には偽妊娠黄体は正常時に退行することを示唆している。