家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
妊娠維持に関する内分泌学的研究I.下垂体別出妊娠ラヅトに対するHCGならびにestroneの妊娠維持作用
三浦 豊彦
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1969 年 14 巻 4 号 p. 115-120

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抄録

妊娠前半期にて下垂体を別出されたラットにおいては悉く,妊娠の中断がみられる。
Sprague-Dawleyラットでは,妊娠10日目(腟垢に精子が検出された日を妊娠0日)にて下垂体を別出すると,91%がそのまま妊娠を維持するが,妊娠9日目に下垂体を別出すると,87%に妊娠の中断がみられる(妊娠21日目にて解剖)。
妊娠前半期の間に下垂体を別出し,HCGを術時から妊娠前半期の間だけ(妊娠9日目まで)1日1回投与し,妊娠維持を検討してみると,下垂体別出が妊娠4日,5日目に行なわれたラットに対してはHCG日量40IU,妊娠7日目以後に行なわれたものでは日量4IU投与で高率に妊娠を維持させることがわかった。
一方,HCGがprogestin分泌と共にestrogen分泌作用をも有することが知られているので,前述のHCGと同じ方法で,下垂体別出ラットに対してestroneの単独投与を試みた。その結果,妊娠7日目以後に下垂体を別除したラットにestroneが妊娠を維持させ得ることが明らかとなった(妊娠7日目下垂体別出群,estrone日量1.0~4.0μg投与で,妊娠維持率は44~50%;妊娠9日目下垂体易出群,estronel.0~2.0μg投与で,妊娠維持率29~71%;妊娠9日目下垂体別出群,estroneO.5~1.0μgで,妊娠維持率17~88%)。したがって,妊娠前半期の末期に近い妊娠日数にて下垂体を別出された群では,HCGによる妊娠維持作用を,すべて,HCGのprogestin分泌作用によるものとみなすことはできないように思われた。

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