家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
牛の子宮頸管粘液の電気抵抗度に関する研究
佐藤 幸男
著者情報
ジャーナル フリー

1969 年 15 巻 1 号 p. 8-13

詳細
抄録

著者はさきに考案した牛の子宮頸管粘液(CM)の電気抵抗度の(ER)測定器1)の摺動距離を変えて実験を行なったが,授精時採取したCMのER値が既報1)の成績からほぼ正常値と考えられる(標準偏差内)ものは,NaCl濃度約0.7~0.9%のER値に相当した。この範囲から逸脱したR指数46(0.6%NaCl水溶液の示す抵抗値)を示す牛が,今回の実験では68頭中3頭みられた。従って,今後同型のER測定器を作る場合でも,NaCl濃度0.7~1.0%の示す実測R指数値を受胎率などからみて正常な牛の発情CMのER値と考えてCMの測定を行なうことができる。
今回の全例の受胎成績は50.7%で既報1)(48.1%)より優れていた。これはCMのERの異常なものが少なかったためと考えられる。ERが正常範囲の牛の受胎成績は51.6%で既報の58.4%よりはやや劣っていた。CMのER値がNaCl0.7%に相当する場合の受胎率は最もよく(69.5%),NaCl0.8%相当の場合がこれに次ぎ(46.9%),0.9%および0.6%では受胎率は低下した。この成績は既報1)と同様であり,ER値を測定することによってCMの異常牛を除くことにより受胎率を向上させ得ることを追認した。
性周期CMのER値は,発情期に最低で,排卵後直ちにER値は高くなる。そして,黄体最盛期は最も高く,黄体の退行あるいは,卵胞の発育と共に再びER値は低くなる。このようにCMのER値は,黄体の消長あるいは卵胞の発育と密接な関係のあることを認めた。

著者関連情報
© 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top